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小雲エイチ
小雲エイチ
novelistID. 15039
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素晴らしき日々かな?

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そして、「どうなんだろ、よく分からない……」とぶつぶつ呟いたかと思うと、そのままソファに倒れこんでしまった。気分でも悪くなったのだろうかと思ったが、しばらくすると穏やかな寝息が聞こえてきた。
帝人君の手から、空っぽになった缶チューハイが滑り落ち、床に転がり落ちる。
それを拾うために、身をかがめた俺は驚いた。ソファーで死角になっていて気がつかなかったが、床にあるのは空っぽになっているであろう、缶、缶、缶。確かこいつ、焼酎も飲んでいたはずだ。いくらなんでも、飲みすぎだろう。ここで寝られるのは正直迷惑だけど、吐かれなかっただけよしとしようか。
彼にしては珍しく面白味のない近状報告ではなく、昔を懐かしむような話を始めたのも、もしかすると見た目以上に酔っていたせいなのかもしれない。

締まりのない顔で眠る元少年の頭をそっと撫でる。すると帝人君の締まりのなかった顔が、更にふにゃふにゃと締まりがなくなる。それに軽く苛立ち、軽くデコピンをかますと、帝人君が眉根を寄せて軽く唸った。締まりのない顔するから、こういうことになるんだ。いい気味だ。
勝手にせっかく手に入れた非日常を手放して、勝手に俺の友達面して、勝手に俺の生活の一部になって、本当に腹が立つ。誰もそんな事、頼んでもいないのに。
いっその事、こいつをぐしゃぐしゃにしてしまえば、この苛立ちも解消できるだろうかと思い、少し緩んでいる青色のネクタイを解く。
むしゃくしゃしたから、キスでもしてやろうと顔を近づけた。それなのに、彼が締まりのない顔してむにゃむにゃ笑いながら「臨也さん」だなんて言うもんだから、すっかりその気が殺がれてしまう。こいつは本当に、何なんだ。勝手に友達面をしてずかずか家に上がり込んで勝手に眠りこけて――俺の気も知らないで。こいつは時々本当に、腹が立つ。
缶ビールのプルタブを開け、一気にそれを呷れば、苦みの強いビールが、炭酸と共に喉をくだってゆく。
これを買ってきたのは彼だから、この味のよさを知るくらいには、彼も大人になったという事なのだろう。
平凡な見た目にそぐわぬ行動力と、俺でも考え付かないような行動を起こしたかつての彼は、俺にとって輝いて見えた。今の彼は、確かに以前と比べるとつまらないもののように思う。
けれど俺自身、彼との二か月ぶりの再会を、こんなにはりきって料理を作りもてなしてあげるくらいには気に入っているところもあるようだ。だからといってはなんだが、とりあえず今は、かつて少年だったこの若者の面白味のない成長を、喜ばしく思ってやることにしようか。