closer
その三國のせつない望みに、公麿は三國の掌に己の指を絡めた。もう一つの記憶が三國の言葉に歓喜している。その感情に感化されているのか、それとも自分自身から湧き出たものなのか判らないが、嬉しい感じる心が重なっている。
「いいよ、三國さんが嵌めたい指に付けてよ」
委ねるように大きな背中に身を預けた。温もりがじんわりと伝わってくる、少し熱くなった気もする。ただ愛おしく背中から三國を抱き締めた。
「いいのか?」
少し震えた三國の声は、喜びと不安を帯びている。一回り以上も年上だというのに、彼がたまらなく可愛らしく見える。
「うん、明日一緒に行こうよ」
「ああ」
大きな手が公麿の指に絡まり、抱き寄せるように強く握られた。背後から男の鼓動を聞きながら公麿は小さく呟いた。
「三國さん」
「どうした?」
「俺、今は三國さんのこと受け入れられないけどさ……、好きだよ、あんたのこと。だから、側にいるよ……」
「…………」
「なに?」
なにか三國が小さく呟いた。聞き逃したその言葉を聞き返したが、三國は小さく首を振りそれを拒否した。焦れた公麿はよじ登るように、三國から手を離すと公麿は三國の肩に手を置き、その横顔に唇を寄せた。その感触にはっと身じろいだ三國を抱き込むように、肩から腕を垂らし、顎を乗せた。その柔らかい公麿の髪に自らの頭を寄せるように、三國は身体を寄せた。そして、胸元の掌を包み込んだ。
【終】