なんやかんやで
「あのな赤也」
丸井先輩も、本当は不安なくせに、部長の前では特に明るく振る舞ってる。
「お前が嫌な理由なんてちゃんとは知らねーよ」
「っ、ふ、」
「だけどな、これだけは覚えとけ」
「こんな時こそ仲間を支えろ」
「いくら強い奴だってな、俺や赤也と同じ人間なんだよ。一人のな」
何いきなり、わかってるよそんなこと。
「だからいくら強くたってめちゃくちゃ辛いことだってあるし、それで泣いたりもするし。だけどそれはしょうがねんだよ、だって当たり前だろぃ?お前だって辛けりゃ泣くだろうが」
まさに今泣いてるし。
内心冷静なのとは裏腹に、涙の勢いは止まらない。
「強い奴は上に立つもんだからな。憧れられるなんて日常茶飯事なわけ。だからいつだって下の奴らに示しがつくように、気ぃ張ってんだ。下の奴に立派になって欲しいだろうし。
でもそれが窮屈だっつうのも本音なの。
本当は辛い時は泣きたいの、でも下の奴の前じゃできないじゃん?ぶっちゃけプライドとかもあると思う。
だからな、そういう時は甘えられる奴に充分甘えさせてやれ。そいつはちゃんと自分に甘えさせてやること。
そういう時間を作ってやること。自分が甘えさせてやれる人間じゃない場合は、残念ながらそれくらいしかできません。
だけどそれも充分支えてやれてるんじゃねーの。言い方は悪いけど、見て見ぬふりっつーか。あと知らんぷり?言い方悪いけど。
誰か一人欠けてたら意味ないとか言うけど、だからって暗い空気じゃ良くなるもんも良くならねーし。いやわかんないけど、気の持ちよう的な。だからできるだけいつも通りに振る舞いたいし。
まぁ頭じゃわかってても難しいし、そうすぐには出来ないかもしんないけど。でも理解するだけでも支えになると思う」
「そういうのが仲間なんじゃないのと俺は思う」
「どうよ」
「長い!」
「うっせ!でもぶっちゃけ俺もだんだん何言ってんのかわかんなくなった」
本当、なんなのこの人。
いきなり真面目な顔して。
いきなり語り出して。
やっぱ自己中だ、マイペースだ。
けど。
やっぱ、先輩なんだな。
「で?何か出ないの缶ジュースとか」
「…財布、今持ってないッス」
「はぁー?お前バス通学じゃんよー」
「定期ッスよ」
「男なら小銭だろぃ」
何その定義。
思わず吹き出したら、丸井先輩も笑った。
今度お見舞い行く時には、ちゃんと小銭持ってこよ。
丸井先輩みたいにケーキなんて粋な計らいはできないけど、小遣いピンチだししゃーない。
それと、幸村部長の好きな飲み物を聞いとこう。
-END-
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