なんやかんやで
花瓶は病室の近くの窓辺に置いて、俺と丸井先輩は病院の中庭を歩いていた。
「何か奢れよ」
マイペースなのも、ここまで来ると尊敬する。
「…自分で買えば」
つい声色が低くなる。
「おめー何タメ口聞いてんだよ」
「俺もう嫌だ、もうお見舞いなんて来たくない」
「はぁ?てめぇもっぺん、
…何泣いてんだよ」
「う、っうぅ」
幸村部長が倒れた、脳の病気だっつって入院した。
真田副部長がテニス部を仕切るようになった。
「負けてはならんのだ」が副部長の口癖になった。
部活の後は幸村部長のお見舞いに行くのが普通になった。
部長は会いに行く度に笑わなくなってった。
だんだん部長の筋肉が落ちてきてるのがわかった。
頬がコケてきてる気がする。
自分から部活の様子を聞くくせに、聞いたら聞いたでそれっきりほとんど喋ってくれない。
怒り出しそうで泣き出しそうな顔で、どこか一点を睨みつけてるだけ。
副部長は部活をやたら気遣うくせに、俺たちの前では怒鳴りっぱなし。
ばれてないつもりなのかな、すごい疲れてるくせに。
他の先輩たちも不安なのがわかった。
前と何も変わりませんよ、みたいに普通に振る舞ってるけど。
それが余計に痛々しいんだよ。
お陰で部活の時間は緊張した空気がこっそりと張りつめてる。