LOVE LOVE LOVE
「…ち、面倒くさい奴が来たなぁ」
クラウドの姿を見ると、ケフカはあからさまに嫌な表情を浮かべる。
「も~良いよっ!!ティナはまた今度、絶対に貰いに来るからさぁっ!」
と、捨て台詞を吐くと、ケフカはその場から姿を消した。後を追うつもりは無かったが、どちらにしろそうする事は出来そうになかった。
「…大丈夫か?」
クラウドはケフカが消えたのを確認すると、ティナやオニオンナイトの側へ足を向けた。オニオンナイトはまだ比較的大丈夫そうではあったが、ティナの顔色が酷く悪い。
「僕は大丈夫だけど、ティナは、」
疲れている筈だと、彼がそう言う前に、ティナがふらりと体制を崩した。それを慌ててクラウドが受け止める。
「ちょっと、…あんたっ」
「…ごめんなさい、私、」
「もう良い、何も言うな。とりあえず少し休め」
クラウドはそっとティナの瞼を閉じると、彼女は全体重を彼に預けた。
「…ごめんな、さい」
「…目が覚めたか?」
目を開けると、辺りは既に日が落ちたのか、真っ暗になっていた。クラウドの前の焚き火の明かりだけが、辺りを煌々と照らしている。
「…クラウド?」
「あぁ。まだ日が明けるまでには時間がある。まだ寝ておいたらどうだ」
「あなたは?」
「その内、オニオンナイトを叩き起こして火の番を代わったら、俺も寝る事にするさ」
火の光に照らされたクラウドの表情が、少しばかり和らいでいる。ティナはそれを見て、力無く笑う。
「ごめんなさい、クラウド」
「…何の事だ?」
「私、またあなたに助けられてしまったわ」
そう言いながら、ティナはゆっくりとその場に身を起こすと、クラウドの側まで行き、彼の隣に腰を下ろす。
「俺は、そんなに何度もあんたを助けただろうか?」
「えぇ、私はいつもあなたに助けられてばかりね。そして私には、あなたにその恩を返す事も出来ない」
「そんな事は、」
ティナの言葉にクラウドの表情は一瞬曇ったが、直ぐに元の通りに戻る。まるで何かを誤魔化した様だったが、その時のティナには気が付く事も出来なかった。
「そんな事は無いさ。それに、」
「え?」
「こんな時は、『ごめんなさい』ではなくて『どうもありがとう』だろう。俺は別に、あんたを助ける事を苦に思って居る訳じゃ無い。仲間だし、助けるのは当たり前だ。それならせめて、労ってくれ」
冗談染みたクラウドの言葉に、その時漸くティナが笑った。
「…ふふ、そう言ってくれると、嬉しいわ」
ふわりと笑う少女のそれが、青年には酷く眩しい。
「クラウド、ありがとう」
「どういたしまして」
(俺はあんたを助ける事を、苦になんて思ってなんかいない)
ティナが再び眠りに落ちてしまって、その場で起きているのはクラウドだけ。辺りに響くのは、火がぱちぱちと燃える音のみ。
(俺があんたを助ける為に、誰よりも先に駆けつけるのは、)
目の前には、眠る少年と少女が二人。少女の寝顔を眺めながら、クラウドは心中ぼそりと呟いた。
(多分俺が、あんたの事を)
作品名:LOVE LOVE LOVE 作家名:とうじ