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コスモス先生のお悩み相談室

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今日も世界は平和である。
「どうしたのですか、ティナ」
いや、本当のところを言うと、平和である筈が無い。平和であるのならば、この世界に何人もの戦士達が召喚される筈が無いからだ。しかし彼女が『平和』だと言い張るのならば、皆が平和であると口を揃えるしかないのだ。彼女が白を黒と言えば、この世界ではそれは黒なのだから。
「…コスモス」
彼女の名はコスモス。この世界に君臨する二人の神の内の一人である。彼女に呼ばれた戦士達は、彼女のカオスとの戦いで力をすり減らしたので、自分の代わりにカオスと戦って欲しい、と聞いている。だが正直、それが本当なのかどうかは怪しい様な気がする。元気がないと言う割には、いつでもどこにだってでも現れるし、何よりその当人が凄く元気そうに見えるからだ。
 それは兎も角として、岩の上に座って一人ぼんやりと考え込んでいるティナの姿を見つけたコスモスは、彼女に声をかけた。コスモスの声でティナが振り向く。
「ちょっと、…気になっている事があって」
「気になっている事?」
ティナの横にコスモスがちょこんと座る。見目はこんなにも麗しいのに、彼女のやる事なす事が全て豪胆であるのは、一体どうしてなのか。今だってそんな欠片は一つも見せないのに。
「クラウドの、事なんだけど」
「クラウドがどうしたのです?」
ティナの言葉に、コスモスが鸚鵡返しに男の名を口にする。するとじんわりとだが、ティナの頬が赤くなった気がした。
「最近、クラウドを見ると、何だか胸がどきどきする様な気がして」
「それで?」
「他の人を見てもそういう事無いのに。私一体どうしちゃったんだろうって思って…」
「…そうですか」
ティナの言葉に、ふんふんとコスモスが神妙な表情を浮かべて、更に首を縦に振る。
「コスモスには、これがどういう事なのか分からないかな?」
自分ではこれが何なのか分からないの、と言うティナにコスモスは更に考え込んだ様だった。そして目を開けると、ごほんと咳払いをする。
「クラウドとあなたの相性が良くないのかも知れませんね…」
「え?それってどういう事なの?」
コスモスの言葉に、ティナは彼女の方へと身を乗り出す。彼女の言っている言葉の意味が分からずに、ティナは訝しげな表情を浮かべて、首を傾げた。
「元々あなた達は違う世界の者同士です。例えばあなたは魔導の世界からやって来ました。逆にクラウドは機械の世界からやって来ました。詳しくはまだ良く分かりませんが、その辺りが互いに良くない影響を与えているのかも知れません」
「…そうなのかな」
コスモスの話は何だか幾何学過ぎて、魔導の力の事しか分からないティナにはさっぱり分からない。理解しようと頑張ったのだが、それでも頭の上には『?』ばかりが浮かぶ。
「でも、クラウドにだけだよ?」
「その辺も良く分かりませんが、あなたは他の者達よりクラウドとは取り分け相性が悪いのかも知れませんね。これからは、彼には余り近付かない様にしてください。その内私が何とかしましょう」
「う、うん…」
にこりと笑ったコスモスに、ティナは『うん』と言って首を縦に振る事しか出来なかった。


「何なんだ、これは」
「…何か悪い事したんじゃない?」
クラウドがぼそりと呟いたのに対して、オニオンナイトがそう返した。だが少年が言う様な事など、クラウドには心当たりが無い。
「俺は何もしていないぞっ!」
「そりゃ、アンタがそう思っているだけで、向こうが動思っているかなんて分からないじゃないか」
オニオンナイトの言葉に、クラウドは思わず言葉を詰まらせた。確かに少年の言う通りである。
 現在、クラウドの目の前にはティナが居る。だが目の前と言っても、側ではない。かなり離れた場所から彼女がこちらをじっと見ているのだ。どうやら彼はティナに避けられている様なのだが、彼には彼女に避けられる様な心当たりは何も無かった。
「ティナ、あのさ」
「…きゃ、」
仕方が無いので、クラウドからティナに歩み寄ろうとした瞬間に、その悲鳴。もう何だか泣きたい気分になってしまったのは仕方がないだろう。だがクラウドの後ろでは、オニオンナイトがそれを見てげらげらと腹を抱えて笑っている訳だが。
「あ、違うのっ、ごめんなさいっ!!」
そう謝りながらも、ティナはどんどんと後退していく。後退して行きながらも、一体何が『違う』のか。一体何が『ごめんなさい』なのか。どうか叶うならば、その意味を教えて欲しい。
「あのその…」
「ティナ、頼むから待って…」
待ってくれと、クラウドが言い終わる前に、
「本当にごめんなさいっ!!」
とティナが頭を下げると、彼女はくるりと彼に背を向けて、その場から逃げ出した。それを見送りながら、クラウドの頭の中ではごーんごーんと、暗い鐘の音が鳴り響くのが聞こえた。
「あちゃー、ティナに完全に嫌われちゃったねぇ」
「何が可笑しい…っ!」
「可笑しいに決まってんじゃん。僕はティナは大好きだけど、アンタの事は嫌いだし。自分の好きな人が自分の嫌いな奴を嫌いって、これが喜ばずには居られると思う?」
クラウドに向かってオニオンナイトはにやにやと笑うと、彼女の後を追って駆けて行く。
「待ってよ、ティナ~っ!」
そしてその場に一人、残されたクラウドは呆然としたまま、最早どうする事も出来なかった。
(俺が、ティナに…嫌われた、だと?)


    ******


 今日も相変わらず世界は平和だ。
「どうしたのですか、クラウド」
いや、本当のところは平和などではない。正直彼にとっての平和とは世界の平和などではないからだ。彼にとっての平和とは、自身の心の平和なのだから。
「…コスモス」
岩の上に座って、目の前にある草原をぼんやりと眺めていたクラウドに、コスモスが後ろからやって来て、彼に話しかけた。いつも無口な彼ではあるが、今日は今にも死にそうな表情を浮かべている。
「ちょっと、…悩んでいる事があって」
「悩んでいる事?」
「ティナの、事なんだが」
「ティナがどうしたのです?」
「最近どうにも、ティナに徹底的に避けられている気がするんだが」
元より、自身の幼馴染は女だったとは言え、それ以降の彼はほとんど男ばかりの世界に居たのだ。年頃の女の子の気持ちなど、彼に分かる訳がない。彼がどんなに頭を捻った所で、それだけはどうしようもならないのだ。
「…そうですか」
「コスモス、あんたには何か心辺りは無いか?」
「心当たり、…ですか」
ただでさえコスモス側の女性の数は少ない。だからコスモスがティナと仲が良いのは当然の事なのかも知れない。彼女は良くティナの相談に乗っていると、ティナ本人から聞かされた事がある。
「さぁ…、私には分かりませんが、あなたが何か彼女の気に障る事でもしたのではないのですか?」
「オニオンナイトにもそう言われたが、俺には全く心辺りが無いんだ」
コスモスの問いにクラウドはそう言って肩を落す。良く表情が無いだの、朴念仁だと言われる彼が、自分の感情をここまで露にするのも珍しい。
「とりあえず、謝るしかないのではないですか?心辺りがないのならば、彼女に聞かざる負えないのですから、そこはまた謝り倒すしかないですね」
「…そう、だな」