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神様よりもはやく

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かつて、なんて言うほど昔ではないし、かといって、最近という程でもないけれど。
僕には叶えたかった願いがあった。
実現させたい想いがあった。
守りたいと必死に祈った居場所があった。
「君の願いを死なせたりなんかしない。誰にも、俺にも殺させはしない今度こそ、」
叶えられなかった願いがあった、
実現できずに崩れていった想いがあった、
守れずに傷つけて二度と戻らなくなった、戻れなくなった居場所があった、
「少しでも沢山叶えてあげる。他のどんな誰よりも沢山たくさん実現させてあげる、どんなに小さくても些細でも意味がなくても、」
奪われた願いがあった、
弄ばれて利用された想いがあった、
自分の手で壊さざるを得ない状況に追い込まれた居場所があった、
「そうして少しでも、」
そうしてそれは、目の前の男が全て仕組んだ事だった。
僕は、目の前で顔を歪めた男が憎くて憎くてでどうしようもなくて。
誰よりも怨んで、彼を殺す為ならば全てを捨てても構わないと本気で思ったことがあるくらい目の前の男のことを憎いと思っていた。
「 、」
殺してやろうといつも思っていた。
ナイフを握りしめて彼に向かい合った事もあった。
彼を殺す夢を何度も何度も繰り返し見た。
狂う程に彼の死を願った。
彼の首に手をかけたこともあった。
電車のホームで彼の背中に手を押し当てたこともあった。
彼のパソコンに、皮膚から接種するタイプの毒を塗布しようとしたこともあった。
無味だと謳う睡眠薬を大量に購入したこともあったし、彼の居場所を売りつけてやろうとした事もあった。
「少しでも君が、・・・」
だけど彼はこうして僕の目の前で息をして僕を見つめて僕に話しかけて僕に触れている。
わかってた。
わかっていた。
僕は、目の前で顔を歪めている男が好きで好きでどうしようもなくて。
誰よりも好きで、彼の為ならば全てを捨てても構わないんじゃないかって本気で思ったことがあるくらい目の前の男のことを大切に想っていた。
でもそれはやっぱり只の想像であって、実際に彼の手によって大切にしてきた全てが奪われ壊される様は絶望だとしか言いようがなかった。
彼を憎んだ。
殺してしまいたいと思った。
この手で、誰よりも醜く誰もが憐れむ暇もない程の残虐性でもって殺してやりたいと思った。
「君が、幸せになってくれるのなら」
殺してやりたくて仕方がなかった。
彼の幸せを願いを全て奪って潰してやりたかった。
「願いを叶えることで君を幸せにしてあげられるのなら、」
かつて、なんて言うほど昔ではないし、かといって、最近という程でもないけれど。
僕は彼の事が好きで好きでどうしようもなかった。
彼のためなら全てを失ってもいいとさえ思っていた。
彼がそばで笑ってくれるのならば何を失ってもいいと思ったし、彼がその低くて甘ったるい声で僕の名前を呼んでくれるのならば何でも出来ると思ったし、彼が僕に余す所なく触れてくれるのならば地獄だろうと耐えられると思っていた。
「神様なんかよりもはやく、俺が君の願いを叶えてあげたいんだ、」
彼は僕に全てを失わせた。
僕の居場所を僕の手で失わせておいて、堂々と僕の隣で笑いかけてくる。
僕に人を傷つけさせておいて、みかどくん、と低くて甘い声で僕の名前を呼んだ。
彼以外もう誰もいなくなった僕に、彼以外に縋るものがなくなった僕に、愛しそうに彼は触れてきた。
そうしてそのくせ、
「俺が君を幸せにしてあげたいんだ。他の誰でもない君の幸せを奪った俺が、だからこそ俺が、君を、誰よりも何よりも沢山たくさん幸せにしてあげたいんだ」
ごめん、なんて言うんだ。
「だから、君の願いを教えて」
その度に僕は、ばかだなあ、と思うのだ。
添えられた彼の手に頬を擦り寄せる。
ひく、と震えた彼があんまりにも馬鹿だから、僕は何故だか涙が出そうで困ってしまう。
両腕を彼の首に回して引き寄せる。
されるがまま傾いてきた彼の、その馬鹿みたいに愛しい唇を塞ぐ一歩手前で言ってやる。
「僕の願いが何なのかは、教えて上げません」
自分でちゃんと考えて下さい。
早口に告げて、何かを言おうとした唇に噛みつくようにキスをした。
ばかなひと。
願いが叶うことが幸せであるのならば、僕にも貴方を幸せにすることが出来るのでしょうか。
紙に書いて祈って拝んで願うよりももっとずっと早く、僕は貴方の願いを叶えてあげたでしょう。
だから貴方もはやく僕の幸せに気付いて下さい。



神様よりもはやく君の願いを叶えてあげる



(ちなみに臨也さん、織り姫と彦星は願いを叶えてくれるとは言われていますが、神様ではないんですよ)
(・・・えっ)
(時々ずれてますよね、臨也さんて)
作品名:神様よりもはやく 作家名:ホップ