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ダーチャにて 7

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 サウナの房内では、ロシアとフランスが葉の繁った木枝で、お互いを叩きながら逃げ回っていた。それを端のイスに腰掛けたプロイセンが、笑いながら眺めていると言う、随分カオスな状況が繰り広げられている。
「わ、何でアメリカ君までフランス君の真似してるの!?」
「ええ?」
ぎょっとしたようにロシアが言う。よく見れば、ロシアは下着着用で、振り返ればプロイセンも、ちゃっかりトランクスを穿いている。フランスだけが意味もなく自慢げに、丸裸の腰を突き出していた。
「騙したなプロイセン!」
「引っかかる方が悪ィんだろ。バぁカめ」
ケセセセ、とわざとらしくプロイセンが笑う。そこへフランスが後ろからべったりと張り付いてきて、アメリカは思わず悲鳴を上げて飛び上がった。
「いーじゃんいーじゃん、バーニャの醍醐味は裸のお付き合いでしょー」
「まあ、いいんじゃないかな。君はまだ子供なんだから、あんまり気にしないでも」
 いつの間にか椅子に腰掛けたロシアまでもが、ぱたぱたと白樺の枝で自分の肩を叩きながら、失笑するように言う。
「どういう意味だよ!」
「君がXSサイズでもみんな笑わないってことだよ」
「……また古い話を!」


 白樺の枝を、教えられた通り水に浸して、汗を掻いた背中や足に叩きつけると、微かに薄荷のような匂いがして、心地よかった。
「やっぱりこの季節は、まだちょっと早いよね。水風呂も作っておけばよかった」
「まあな、ここは飛び込む川も湖もねぇからなあ」
「でも雪の中にダイブするのは、俺は嫌だねえ」
「素っ裸で入るからでしょ。パンツ穿きなよ」
「それは俺のポリシーに反する」
「なんだい、その話」
雪にダイブだの、川に飛び込むだの、何だか楽しそうな話に、アメリカも身を乗り出した。
「バーニャはな、暑くなったら、プールや湖や川に飛び込んだり、冬なら雪に飛び込んで、身体を冷まして、何度も出たり入ったりすんだよ。フルチンで雪に飛び込んだ時の、あの痛さったらなかったね! 危うくフランソワになるところだった」
フランスがしみじみ首を振る。
「フランソワになりゃ良かったのに。昔は可愛かったんだからよー」
イスに浅く腰掛け、足を高々と組んだプロイセンがチャチャを挟む。
「まあ、お兄さんがお姉さんでもモテモテなのは変わらないけどね」
 汗と蒸気で濡れた髪を掻き上げてフランスがシナを作ると、ロシアとプロイセンがそれぞれに肩を竦めて視線を逸らす。無言のうちに、自分がフランスに何かを言わなければならないような圧力を感じて、アメリカはげんなりと口を開いた。
「その自信は一体どこから来るんだい?」
「そりゃ信頼の実績があるからな」
 自慢げに指先で自らの顔をつるりとたどり、ぱちんとウィンクを一つこぼす。意外なことに、まあな、とプロイセンも頷いた。
「昔イギリスの奴が、何でアレが男なんだってすっげー悔しがってた程度には、昔のこいつは可愛かったんだぜ」
「へえ、そうなのかい?」
「さあ、僕はその頃のフランス君とはまだ会ってないから。みんな、天使みたいな美少女だったって言うけど、どうだかね……」
「今はただのエロヒゲオヤジだからなぁ」
「誰がただのヒゲオヤジだよ!」
何で俺ばっかりこんな扱いに、と言ってフランスが頬を膨らますが、明らかに自業自得だった。



 ロシアの指示に従って、サウナを出たり入ったりしながら、時々前室で冷えた飲み物を飲み、肴を摘むことを繰り返す。「大人」たちは水も飲んではいるものの、平気でワインやウォッカを飲んでいるので、呆れるばかりだった。のぼせて倒れでもしたら、どうするのだろうと思う。
 酔っぱらい達が昔話を弾ませている横で、アメリカは白樺の樹液を炭酸で割った清涼飲料水を一人、ストローで飲んでいる。蒸気とアルコールで、いつもは殊更真っ白いロシアの顔や身体の皮膚が、内側からほんのりと赤みを帯びているのを、ぼんやりと見ていた。アレに似た食べ物を、どこかで見たような気がする。それがどこだったのか、頭の中にまで蒸気がかかっているように、思い出せない。
「あー……」
 甘酸っぱい、やわらかい、自国にはない食べ物だ。
「おい、アメリカ?」
「うん……」
「アメリカくーん?」
のぼせちゃったのかな、と言うロシアの声が、うんと遠くに聞こえる。ぼやけた視界が一瞬、朝焼け寸前の夜明け色に染まり、そのまま白く輝いたかと思うと、アメリカの意識は一気に暗闇に吸い込まれていった。
作品名:ダーチャにて 7 作家名:東一口