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いつだって二人がいい

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最初の出会いは、僕の部屋の前で倒れているのを見た時だった。
「うわ、何これ関わりたくない!」と、内心思いつつもそこまで薄情になれない僕は仕方なしに「大丈夫ですか?」と、声をかけた。

今思えば、最初のその一言が、僕の人生を狂わせた。


「何、やってんですか?」
バイトから帰って真っ暗な部屋の電気をつけると、どうやって入ったのか(もう考えたくもない)招かれざる客が来ていた。
「み、みかどくん…。」
弱弱しく僕の名前を呼んだ、その後に続く言葉を僕は知ってる。

「お腹すいた…。」

ぐ~きゅるるるっ、と、漫画のような音が部屋に響く。
僕はため息を吐いてキッチンへ立った。

ガツガツガツと、優雅さのカケラも無い食べ方をする人物を横目に見ながら、僕は大学の課題を進める。
僕だってお腹空いてるんだけど…。
2人前作ったはずのチャーハンはすごい勢いで彼の胃袋の中へ吸い込まれていく。

彼は自分のことを『折原臨也』、「臨也」と書いて「いざや」と読む、と言った。
なんだそのペンネームみたいなあり得ない名前。絶対中二病患者だ、こいつ。
と、失礼なことを思っていたら、なんと23歳。僕より3つも年上だということが判明し、慌てて話し方を敬語に変えた。

臨也さんは僕が余り赴くことのない池袋では結構な有名人らしく、友人に聞いたところではかなりの問題を抱えた人らしい。
人と喧嘩して電柱を吹っ飛ばすとか、それを避けるとか、聞くだけでは「それ、絶対嘘だろ?」と突っ込みたくなるようなエピソードばっかりで、改めて関わるんじゃなかったと後悔してる。

『人生は非日常が面白いんだよ。』
臨也さんは笑う。

冗談じゃない。
僕は『平凡、安定』こそが人生の醍醐味だと思ってる。
だからこそ僕は常に安定を求めて生きてきた。・・・臨也さんに会うまで。


「あー、お腹いっぱい。」
満足げにそう言った臨也さんは僕が課題に手間取っているのを見て、ひょいっとその用紙を取った。
「ちょっ…。」
僕が抗議の声を上げると、すでにさらさらさらとその用紙に書き込んでいた。
「はい。」と、渡された用紙にはもう空欄はない。

・・・文化人類学、なんていうマイナーな学問に精通してるこの人は一体何なんだ。

「帝人くんパソコン買わないの?」
「は?要りませんよ。絶対使えこなせませんから。」
僕は機械音痴だから、と前から言っているのに何度も臨也さんは進める。
「俺が使ってるの譲ってあげよっか?」
「だから要りませんって。」

そんな気遣いよりチャーハンを残してくれりゃ良いのに。

内心そう思いながら玄関に行きサンダルをひっかけた。

「あれ?どこ行くの?」
「…コンビニです。誰かさんが食料食べつくしてくれたもんで。」
棘のある声でそう言うと、慌てたように臨也さんが後ろから着いてきた。
「あ、じゃぁご飯食べに行こう!俺奢るから。」
まだ食べる気なのかこの人。
そう思ったが、たまには奢ってもらっても良いかもしれない。
いつも食料提供してるんだし。
そんな軽い気持ちで「じゃぁお言葉に甘えます。」


と、言った僕がバカだった。



「何食べる?」
傍目にもわかるほどうきうきとした臨也さんの前で僕は頭を抱えている。
「帝人くんて何が好きなの?フォアグラ?あ、仔羊は欠かせないよねぇ。」
「・・・。」
「これは?このコースにしよっか?」
「・・・もう、何でもいいです。」
サンダルにジーパン。
今ほど自分の格好を恨んだことはない。
そりゃ、最近ではこういう場所も自由な恰好が認められるようになったけど。
店に入った時の店の方の苦笑いが居た堪れない。
でも、その人も臨也さんに気付いた瞬間表情を引き締め、案内してくれた。
一体何者なんだ、臨也さん。

メニューからして何語なのかわからない名前の料理を、僕は口に運びながら臨也さんをチラッとみる。
僕の視線に気が付いたのか臨也さんはへにゃっと笑って「何?」と言った。

「いえ、」
「…っあ、もしかして口に合わなかった?和食が良かったかな、それとも中華?」
「いえいえいえいえっ、滅相もありません!ものすごくおいしいです!」
完全なるビップ待遇で店員さんが臨也さんに一人、僕に一人、常に気を配ってくださって真横にいるってのになんてこと言うんだこの人は!!

僕の言葉に臨也さんはパァッと表情を輝かせ「ほんと?じゃぁまた食べに来ようね!」と笑った。
と、次の瞬間。
「でも俺としてはこんなのより帝人くんがさっき作った『焼き豚チャーハン』のが美味しかったなぁ」

そう呟いて、「もう下げて良いよ。」と8割以上残った皿を店員に押しつける。



笑 え ば い い の か ?



なんていうか、もう余りの傍若無人さに僕は眩暈さえ覚えた。
あんな『焼き豚チャーハンの素』をひやごはんと混ぜて炒めるだけのものと、こんな高級食材とを比べるのもおこがましい。
挙句の果てに

「やっぱ愛情が入ってたから美味しいんだよね。」

とか、言われても、僕には同意ができない!!(元々愛情なんざ入ってないし)


ありえない事態に、こんな人なら電柱だろうが標識だろうが吹っ飛ばしてもおかしくないんだろうなぁ、とそう思った。



(どんなシチュエーションであれ僕たちはきっと恋に落ちるのだ)
作品名:いつだって二人がいい 作家名:阿古屋珠