序章・英雄、ミッドチルダに降臨す 1
キャロとフリードが囲まれた家康達の危機を感じ声を上げた。エリオもティアナも家康達の救援に向かおうとする。しかし、家康は表情を変えずに拳を構え、地面に向ける。
「スバル殿、危ないから下がってくれないか?」
「はい!」
「ウイングロード!」とスバルはグローブ型のデバイス『リボルバーナックル』を地面に打ち付けて水色の線が現れ、「ウイングロード」を伝って家康から離れた。家康の右手は金色に光り、掛け声と共に地面を殴りつけた。
「はああああっ!」
殴りつけたところから地面が割れ、周囲のガシェットドローンを巻き込ませ、一つ、また一つと砕け爆発した。
家康の攻撃になんとか耐え抜いたものもあるが、家康はそれを見逃さず、ガシェットドローンの近くまで近寄り、正拳突きを出した。家康の正拳突きはガシェットドローンを貫き、それに加えて凄まじい風圧が襲う。一つは家康の攻撃を受けて爆発、残りは広い範囲の風圧によって破壊した。
スバルや駆けつけたティアナとエリオとキャロは家康の戦いっぷりを見て唖然とした。自分達は魔法を使って能力を上げないと敵と戦うのに対して家康はその能力を上げる魔法も武器を強化する魔法も一切使わないで、己の拳と超人的な破壊力だけで粉砕したのだ。
「ふぅ……これで全部片づいたかな?」
一段落が付いた家康は一息吐くと、ぽんぽんと埃を払った。スバル、ティアナ、エリオ、キャロの四人は、家康に寄った。ティアナ達も家康もお互い初対面であるため、お互い何者なのか、どんなことをやっているのか何もかも分からないままだった。
「ワシは徳川家康。君達は……」
「ティアナ・ランスターです。スバルと同じく、『機動六課』のフォワードチームです」
「きどう……ろっか? ふぉわあどちぃむ?」
「あっ! 私達が所属している管理局の舞台の名前です。その事は後で詳しく説明します」
またしても新たに聞き慣れない単語を聞いて家康は首を傾げると、ティアナは説明した。
「初めまして、キャロ・ル・ルシエです。お見知りおきください」
「ああ、よろしくな、キャロ殿」
今まで共に戦った小さなフリードは除け者扱いされたのか、悲しい声で鳴いた。
「キュルゥ~……」
「あっ! ごめんフリード! この子は私の使い魔のフリードリヒっていいます。私達はフリードって呼んでいます」
「そうか……フリードは素晴らしい『鳥』だな!」
家康はフリードを褒めたつもりだったが、キャロとフリードの心は傷つき、今にも泣きそうな顔をしていた。
「フリードは鳥じゃないですよぉ~……」
「キュルゥ~……」
「えっ!? 違うのか!? ワシはフリードのような生き物を初めて見たから、その……!」
涙目になるキャロとフリードを見て慌て出し、必死に弁解するが、更に彼女達を傷つけてしまい、家康は必死に謝罪した。これにはスバル達も呆れたような顔で見たという……
あれやこれやと家康が謝罪すること数分後、ようやくキャロとフリードは落ち着いたところで、エリオが挨拶をと自己紹介を終えた。
ティアナ達もミッドチルダの出身であるため、日本の歴史は知らない。もちろん家康の名前を聞いても驚くこともなく、普通に自己紹介を済ませた。
こうして、家康はスバル達フォワード陣と共に『次元漂流者』として行動し、スバル達が所属している『時空管理局』まで移動した。
やがて家康はエース・オブ・エースと出会う――
作品名:序章・英雄、ミッドチルダに降臨す 1 作家名:葉月しおん