序章・英雄、ミッドチルダに降臨す 2
家康とフェイトは向かい合うように座り、家康の後ろにはスバル、ティアナ、エリオ、キャロのフォワードチーム。フェイトの後ろにはなのは、はやて、ヴィータの隊長陣が立っていた。
「まずはあなたのお名前を聞かせてください」
フェイトは丁寧な口調で家康を尋ねた。家康は無礼のないように身なりを正し、礼節を持って自己紹介をした。
「某の名前は徳川家康。三河領の領主で徳川軍及び東軍総大将だ。以後お見知りおき願おう!」
礼節を持ち、堂々たる態度で自己紹介を終えた後、頭を下げた。かつて魔王に仕えていた影響なのか、初対面の相手には誰であろうと頭を下げる癖が身に染みたのだ。
家康が頭を上げると、フェイトとはやての表情は凍りつき、信じられない顔をしていた。それに気づいた家康は恐る恐る尋ねた。
「あ……あの……ワシ、何か変なこと言ったか?」
フェイトとはやてが硬直して、言葉に出せなくなったことでなのはとヴィータが彼女達に声を掛ける。
なのはもまた、徳川家康の名前を聞いて仰天した一人であり、彼女達の気持ちは理解していた。
「フェ……フェイトちゃん?」
「おい、はやて、どうしたんだよ?」
なのははフェイトに、ヴィータははやてに声を掛ける。家康とフォワード陣はフェイトとはやての顔を見て、多少不安になった。沈黙が続いた後、フェイトとはやてがほぼ同じタイミングで声を揃えて絶叫した。
「……えええええええええ!?」
突然の絶叫に家康、スバル、ティアナ、ヴィータ、エリオ、キャロは驚いた。改めて家康の名前を聞いたなのはもやはりフェイトとはやてと同じ気持ちだった。
「フェイトさん!?」
「はやて、どうしたんだよ!?」
「な……何?」
一体何のことかさっぱり分からない家康、スバル、ティアナ、ヴィータ、エリオ、キャロは混乱した。特にミッドチルダに迷い込んだ家康は何故フェイトとはやてが自分の名前を聞いて驚いているのかとんと分からなかった。
「と……ととと、と、徳川家康って……織田信長と豊臣秀吉と並ぶさ……三大英雄の一人のあの徳川家康!?」
「確か関ヶ原で石田三成を敗り、徳川幕府を開いた人なんやな!? あ……ありえへんよ! わたしらの知っとる家康はもっと狸のおっちゃんだったはずや!
こんなわたしらと同じ年のイケメンやあらへんもん!」
もう一度家康の姿を見て、まさかなのは達と同い年の青年があの徳川家康だったということが信じられなかった。家康の近くに居たフェイトはしどろもどろになりながら彼を尋ねた。
「い……家康さん!? あなたは本当に関ヶ原で石田三成を破り、征夷大将軍となって徳川幕府を開いたという徳川家康さんですか!?」
「三成とはまだ決着が着いていないし、その徳川幕府とか征夷大将軍とかは知らないが……ワシは紛れも無く徳川家康に間違いないぞ?」
「うええええええええ!?」
なのは達が住む世界では小学校の頃から耳からたこが出来るほど徳川家康をはじめとする歴史上の人物の名前を教えられたものだ。また、戦国や江戸時代の歴史の流れも嫌というほど学校の教師から学んだ。
それもそのはず、目の前にいる青年があの徳川家康だったということは、なのはやフェイト、はやてにとってとても衝撃的だ。
「おかしいよ! こんな戦国時代おかしいって!」
ショックのあまりか、フェイトとはやては項垂れた。
話が全然ついてこれないフォワード陣とヴィータはフェイト達が一体何を話しているのかさっぱり分からないままだった――
やがて家康は機動六課に入隊する――
作品名:序章・英雄、ミッドチルダに降臨す 2 作家名:葉月しおん