序章・英雄、ミッドチルダに降臨す 2
4.家康と機動六課・中編
なのはがようやく落ち着きを取り戻し、彼女の親友に「徳川家康」の名前を伏せておくと家康に言うと、家康は頷いた。
移動中に家康はミッドチルダの光景に驚きの連続だった。ビルを見ては『鉄で出来た城』だとか車を見ては『馬はいないのか』となのは達に聞くとか家康にとって見たことがないものばかりだった。
また、飛行機やらヘリコプターやら、現代的なものも彼にとって見たことがなく、まるで子供のように興奮をしていたのだった。
―時空管理局 隊舎―
「へぇ、ここがなのは殿達が所属する時空管理局という奴だな? ずいぶんと横長な『城』だな」
「家康さん、城じゃなくて隊舎ですよ」
「おっ? そうだったのか、すまんすまん」
家康の発言に対してティアナが指摘をすると、彼は笑って謝罪をした。
「なぁスバル殿、ここは『君主』とかいるか?」
「く……君主とはまた違うけど、まぁ私達より位の上の人がいるのは間違いないですね」
中に入り、廊下を渡っている途中、家康とスバルは六課の上司について話し合った。また、スバルは四年前の火災になのはに救出されて、それ以来彼女は強くて優しい人になりたいと、なのはのように誰かを助けたいと願い、この機動六課に入った。
その話を聞いた家康は、切ない顔をしていた。どうかしたのかとスバルが言うと、家康はハッとして、「何でもないよ」と答えた。
「八神部隊長! 例の次元漂流者を連れて参りました!」
スバルとティアナが声を揃えて、次元漂流者である家康を連れて来たと報告すると、童顔で茶髪のボブヘアの女性は笑顔で答える。
家康の礼儀作法とこちらの礼儀作法とは異なるものだなと家康は感じた。
「ご苦労やったなぁ。スバル、ティアナ」
女性は席から立ち上がり、家康の近くに寄り、まじまじと家康の顔や腕などを見つめた。
「この人が例の次元漂流者なんやぁ。結構ええ男やなぁ」
「……え?」
「それに……ええ顔もしてはるし、わたし、そういうのタイプかも~」
突然女性に接近されて、しかもまじまじと顔を見られた家康は顔が真っ赤に染まった。女性・やがみはやてのボディタッチも何回も何回もされて家康は若干彼女に対して恐怖した。
「八神部隊長、程々にしてください」
「ごめんなぁ、ちょっと興奮してもうた。あまりにもええ男やったから触りたくなったんよぉ」
「おい、はやて、そいつの顔をジロジロ見るのもそこまでにしろよな」
ティアナやヴィータは呆れた顔をしてはやてに注意をした。はやては笑顔を絶やさないまま謝り、家康から離れて席に戻った。
家康はスバルに耳打ちをして、はやては一体何者なんだと聞くと、スバルははやては彼女達の上司だと答えた。家康の時代でいうと将軍と兵士のような関係である。
新たに部屋の中に入ってきたのは、魔導士の服から制服に変わり、髪型もサイドポニーに変わったなのはと、金髪のロングヘアの女性・フェイト・T・ハラオウンだった。
「はやてちゃん、みんな、ここに集まったんだね」
「なのはちゃん! フェイトちゃん!」
ちなみになのは、フェイト、はやては幼い頃からの親友で、三人一緒に時空管理局に入った。家康はふと思ったことがあった。そう、それはこの機動六課のメンバーがほとんど女性であるということだ。
「な……なぁスバル殿、この管理局って男はエリオ殿しかいないのか?」
家康はだんだん顔が赤くなり女性が多いことに気づき恥ずかしくなった。
「いえ、ちゃんと男性の管理局員もいますよ」
「そ……そうか。なら、よかった。ワシ、どうしても女子が多いところが苦手でなぁ」
家康は顔が真っ赤になり、照れながら右手で頭をかいた。家康の世界とは全く正反対のため、女所帯にはどうも慣れないのである。
そんな態度を取る家康にティアナとキャロがくすくすと笑った。否、女性陣は笑った。
「もしかして家康さんって……」
「女の人が苦手ですか?」
はやてもなのは達と笑っていたが、笑顔が消えて、真剣な表情に変わった。机に肘を乗せて手を組むと、はやては言った。
「ほな、これで揃ったことやし……君のことをじっくりと聞かせてもらおか?」
はやての言葉にて、家康の尋問は始まった――
作品名:序章・英雄、ミッドチルダに降臨す 2 作家名:葉月しおん