7月7日
「ロ…イ
ロイ、ごめ――
「もうあまり、俺に関わらないでくれ。」
!!
「なんでっ!!」
「お前と一緒に居るのは辛い。」
「俺なんかしたか?悪いことしてたなら謝る。それに直す!!」
「もう限界なんだ。」
その顔をさせている原因が俺なら、ロイの言うとおりにしたほうがいいのは分かったけど。
でも、やっぱりそんなの無理だ!!
ロイが傍に居てくれなきゃ…
ただのお隣さんでも、友達でも、どんな形でもいいから…
俺がどうしてもロイの傍に居たい…
ロイの傍離れるなんて…
苦しい…
いやだよ…
「頼むよ…ロイ…」
俺はいつの間にか泣いていた。
次々と溢れる涙に気付いたロイが驚いていたけど…目をそらされた。
あぁ…
そこまで俺はロイに辛い思いをさせてたんだ…
これはその報いなのかな…
でも、だったらちゃんと伝えなきゃ…
「ロイ、俺…
好きな人が居るんだ…
俺今までぜんぜん気付かなくて…
でも気付いたときにはもう遅かった
だから、短冊にお願いしたんだ
最後に俺に思い出をくださいって
七夕祭に一緒に行きたいって
ロイ、俺…
ロイをそんなに苦しめてるなんて気がつかなかった
ごめんロイ…
最後にすっごい楽しい思い出ありがとな…
俺、今日すごい幸せだった。」
涙をぬぐってロイをまっすぐに見つめる。
俺の気持ちが届くように。
もう手遅れで、迷惑なものかもしれないけど、この気持ちはちゃんと伝わって欲しかった。
ロイはまっすぐ俺を見返してくれた。
だからきっと俺の気持ち伝わったんだと思う。
うん。ロイが好きな人でよかった。
「じゃあ、俺に先に帰る。 ロイ、気をつけて帰れよ。今まで悪かったな…」
そう言って俺が帰ろうとしたら、
急に腕を引っ張られて―
!!
気付いたら俺はロイの腕の中に居た。
「いい逃げはずるいぞ。」
「・・・ロイ?」
「俺もずっと好きな人が居るんだ
そいつはいつも笑ってて、
そうかと思うとすねたり・・・
ころころ表情が変わる奴なんだ。」
「やめろロイ、
俺聞きたくない…離せよ!!」
今この状況でロイの好きな人の話なんか聞きたくなかった。
もう俺はロイの傍に居られないのに、
それでもロイの恋を応援したいのに恨んでしまいそうで…
だから耳をふさぎたかったのにそうさせてくれなかった。
「駄目だ最後まで聞け。
そいつはな俺の家の隣に住んでる。
ピンポンもノックもしないで入ってきて、
いつも窓から帰っていく。
時々、俺のベッドで寝ることもあって
俺がどんだけ迷惑したかきっと分かってないだろうな…
七夕祭がイベントの中で一番好きで、
毎年俺が連れて行ってたんだ…
でも、俺はいつまでも保護者役はごめんだった…
そいつはいつも安心しきった目で俺を見てた…
それが辛かった。
俺は自分を抑えられる自信がもう無かったんだ。」
「・・・・・・」
「分かるか?エド。」
「嘘だ…」
「嘘じゃないさ。」
「う・・そ…だよ」
「嘘じゃない。
エド、俺はお前が好きなんだ。」
ドクンと大きく心臓が跳ねた。
ロイの言葉に嘘がないことぐらい分かるけど、
それでも信じられなかった。
だってそんな幸せな…
嘘だよ…
嘘だ…
「嘘だっ んっ!!?」
「俺はお前にいつもこういうことをしたいと思っていたんだ。」
えっ…
なに?
俺、今、何をされた?
唇が…
キス・・・・?
本当に?
本当にロイは俺のことが好き…なのか?
だって好きじゃなきゃ、
キスなんて…
だったらロイは…
お隣だからとかじゃく、
友達だからとかなじゃなく、
俺を俺がロイを想うのと同じ…好き?
「嫌だったか?」
俺はまだ吃驚してて声が出せなくて、
それでも今俺はすごく嬉しい気持ちが心に広がっていたから、
頭をブンブンと横に振った。
「エド、好きだ。 エドは?」
ロイが俺をまっすぐに見ながら言う。
すごく甘い声で、頭がクラクラする。
もう駄目だ…
俺の目にはまた涙が溢れ出してしまった。
「・・・・さっき・・言った・・じゃねぇか。」
「ちゃんと言ってくれ。」
「・・・・・ちゃんと言った。」
「まったく…次はちゃんと好きと言ってくれ。」
「・・・・・言った。」
「言ってない。」
「・・・・」
俺ってば、こんなときぐらい素直になればいいのに、
ロイが好きって気持ちでいっぱいなのに、言葉にならない…
伝えたいと思うのに、声が出ない。
涙だけは溢れ続ける。
あまりにも嬉しいときってこうなっちゃうのか…
ロイ…
俺は言葉の代わりにギュッと抱きついた。
ロイの制服に俺の涙がしみこんでいく。
こんな風に俺の想いもロイに伝われば…
「ありがとう。」
ロイが強く抱きしめ返してきた。
苦しさが心地よかった。
ロイ…大好き――