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「王子様と彼女の話」(サンプル&通販告知)

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 ベルゼブブは身体に衝撃を感じた。
 そのあと、自分の身体がペンギンのような姿から魔界にいるときと同じの本来の姿に変わっているのを見た。
 結界の力が解かれたのだ。
「ありがとうございました、アクタベさん」
 佐隈が明るい声で礼を言ったのが聞こえてくる。
 その声のほうを、ベルゼブブは見た。
 芥辺のデスクの近くにいた佐隈が踵を返し、ベルゼブブのほうにもどってくる。
 なぜだか、ベルゼブブは嫌な予感がした。
「ベルゼブブさん」
 佐隈はベルゼブブのそばまでくると立ち止まった。
「その姿のままでは困りますので、人間に見えるように変装してくださいね」
「はい」
 言われたのは妥当なことだったので、ベルゼブブは素直にうなずく。
 頭に複眼、背中に羽根のある姿では、撮影所やコスプレ会場でもなければ、人々をぎょっとさせてしまいそうだ。普通の人間には姿が見えないようにもできるが、それでは、透明人間が荷物をたくさん持っているようになってしまう。
「でも、ただ人間に見えるように姿を変えるだけではダメですよ」
「は?」
「夏の昼下がりに、そんな暑苦しい格好をしていたら、確実にまわりから浮きます」
 佐隈はベルゼブブの胸のあたりをビシッと指さした。
 ベルゼブブは、長袖シャツに、蝶ネクタイ、ベスト、ジャケットにスラックスという格好をしている。
 スーツにネクタイという点では芥辺と似たようなものだが、それでも、やはり、芥辺よりも暑そうな格好であると認めざるをえない。
「お着替え、してくださいね〜」
 佐隈がベルゼブブのグリモアを片手に迫ってきた。



「……こんなの、絶対におかしい……」
 佐隈が陰気な表情でぶつぶつと呟いている。
 その隣を、ベルゼブブは颯爽と歩く。