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「王子様と彼女の話」(サンプル&通販告知)

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 ベルゼブブはじとっとした眼差しを向けたが、アザゼルは気づかずに威勢良く続ける。
「この短さでスカートやったら、パンツがちらっと見えたりして、ええで」
 いやらしく笑いながら、佐隈の生足にまとわりついた。
 次の瞬間、その佐隈の脚が大きく動いた。
 結界の力がかかっているせいで小さなアザゼルの身体は、吹き飛ばされ、壁へと激突する。
 そのあいだ佐隈は無表情だった。
 ベルゼブブは壁にぶつかったままでいる友人の無惨な姿を眺める。
 だが、同情はしない。
 そんなことよりも重要なことがある。
 ベルゼブブは視線を転じた。
「さくまさん」
 鋭く佐隈を見る。
「あなたにこのベルゼブブのような上品さを求めてもしかたないのでしょうが、もう少し、慎みというものを知らなければなりません」
 説教を始めた。
 けれども、佐隈はそれを無視して身体の向きを変える。
「アクタベさん」
 そう呼びかけ、芥辺のデスクのほうに近づいていく。
 芥辺は本へと落としていた視線をあげて、佐隈を見る。
「なんだ」
「これから買い物に行きますが、いろいろと買うつもりで、荷物が多くなりそうなので、荷物持ちとしてベルゼブブさんについてきていただいていいですか」
「ああ」
 ベルゼブブ本人の意志を確認することなく、芥辺はあっさりと佐隈に許可を出した。
 しかし、佐隈の話はそれで終わりではなかった。
「じゃあ、今の身体よりも大きいほうがたくさん持っていただけると思うので、ベルゼブブさんにかけた結界の力を解いていただいてもいいでしょうか」
 え、とベルゼブブは眼を丸くする。
 だが。
「ああ、かまわない」
 今回もベルゼブブ本人の意志を確認することなく、芥辺はあっさりと佐隈の頼みを引き受けた。
 芥辺がイスから立ちあがった。そして、ベルゼブブのほうを見る。凶相であり、迫力がある。強い眼差しにベルゼブブはとらえられた。芥辺はベルゼブブに向かって右の手のひらをむけた。その人間離れした力が使われる。