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永遠に失われしもの 第18章

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「一体何の騒ぎだ?」



 セバスチャンが開けた広間への戸口に立ち
 シエルは威圧的に、
 青碧眼の眼で睨みつけながら一喝した。
 今まで泣いていたと思わしき、
 赤く腫らせた眼をむけてグレルが怒鳴る。



「なんなのよ、スッキリした顔して、
 起きてきちゃってサ~・・
 一体今まで何してたっつーのョ!」



 広間の中央で立つグレルは、
 葬儀屋にしなだれかかって、
 甘えたように抱かれている。

 シエルはその光景をみたことと、
 自分に言われた事で思い出してしまった事
 との両方から、顔を真っ赤にし、
 怒りながら、さらに怒鳴った。
 


「お前らは何してるんだ、人の家で・・
 アンダーテイカー!??」

「アンタの家でもないでしょッ!」


「は~~~い、伯爵、久しぶり...
 でもないか。
 思ったより元気そうだねぇ、安心したよ」



 葬儀屋はグレルの背から手を離して、
 シエルに、手をゆらゆらと振って、
 挨拶している。



「グレルさんの悲鳴が聞こえましたが--」



 セバスチャンはシエルに、
 主人用の椅子を用意しつつ、
 グレルに問いかける。



「セバスちゃん、前にまた血・・
 広がっちゃったのネ、傷口。

 ガキとやっぱり何かしてたでしょ、
 腹たつゥゥゥ~~」


「それはご想像にお任せします」



 平気な顔で言うセバスチャンに、
 こういうときは、嘘くらいつけ!
 と心の中でシエルは悪態をつく。



「実は...さっきのシネマティックレコ-ド
 今しがた盗まれちゃったんだよ...」



 葬儀屋はグレルの頭を、
 長く黒い爪で撫でながら、
 セバスチャンの問いに答えた。



「何者に盗まれたと言うのです?」



 シエルの手を引いて、椅子まで誘導した後
 紅茶を入れる準備をしながら、
 セバスチャンがまた、尋ねた。



「それが・・・わかんないのョ」


 セバスチャンは頭を横に傾けて、
 怪訝な顔をしながら、
 グレルと葬儀屋を見つめた。



「その者と、
 戦ってらっしゃったのではないのですか?

 悲鳴は三度聞こえましたが」


「イヤン、聞こえチャッタ?・・・
 気がついたときには、
 もうテーブルの上から、無くなってたのョ

 さっきの悲鳴は、
 それが分かって出ちゃったヤツで・・
 あとは・・ンフフ」



 グレルは淫猥に笑って、葬儀屋を、
 ぐらんぐらんと揺らしながら言う。



「アナタってば、見かけによらず、
 余りにもテクニシャンで・・つい声が」


「つい声がっていうレベルじゃなく、
 絶叫でしたよ、断末魔のような」



 セバスチャンが呆れた顔をして、
 ため息をついて言う。



「ああ、鶏が絞め殺される時の、
 声のようだったな・・まるで。

 とにかく僕のような子供にとっては
 見るのも聞くのも有害だ、
 とっとと離れろっ!」


「このガキにだけは、言われたくないヮ~
 不健全背徳スプラッターカップルに・・」


「どの道、獲った者の目的は明白ですからね
 悪戯に戦うより、
 様子を見た方が得策だったので、
 構わないでしょう」



 セバスチャンが砂時計を返しながら、
 シエルに微笑して言う。



「目的は何だ?」



 肘掛に肘をつき、
 青碧眼の眼に退廃的な翳を落としながら、
 セバスチャンに尋ねるシエル。