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永遠に失われしもの 第18章

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「その胸の契約印に傷を付けといてあげるよ
 変に操られない様にねぇ...」



 葬儀屋は黒く長く尖った爪の先端で、
 薄桃色に浮かぶセバスチャンの胸の文様を
 引き裂いた瞬間、漆黒の悪魔は頭を、
 微かに仰け反らせ、眉をひそめて、
 美しい相貌に苦悶の表情を浮かべた。



「本当に綺麗だね、こんなに無防備で、
 そんな表情をされると、
 まるで誘われているような気がするよ」


「誘ってません、
 貴方が傷を見せろというから、
 こんな格好をしてるだけです」



 心外だという表情をしながら、
 セバスチャンは起き上がろうとして、
 寝台に掌をつくが、
 葬儀屋はその手をつかみ、
 セバスチャンの頭の上で押さえつける。
 驚きに見開く紅茶色の瞳を見つめて、
 銀色の前髪奥から、翡翠色の目が光った。



「伯爵と君の望みが叶うまで、
 君は弱ってはいけない。
 じゃないと面白くないからねぇ...。

 普段だったら、小生がこうやって君の腕を
 掴んだって、簡単に振りほどけるだろう?

 この間までの君だったら...」



 葬儀屋は、セバスチャンの胸につけた、
 引っ掻き傷から流れ出た一条の血の滴り
 を舐めて言う。


「何してるんです?--
 死神が、悪魔相手に誘惑ですか?
 上等ですね」


「誘惑してるわけじゃないよ。
 
 わざわざ言わなきゃわからないかい?...
 ここはさすがに、
 自分じゃ舐めれないだろう?

 単に人助けさ...
 ああ、悪魔助けだねぇ...」



 葬儀屋はセバスチャンに顔を寄せると、
 その瞳を黄緑色から不思議な色の変遷を
 辿って燃え上がる赤い瞳へと変化させた。

 漆黒の悪魔の瞳は驚きで最大限に見開き、
 やがて同じ赤い瞳へと移り変わる。
 そして目を伏せ、
 舌先が潜り込むのを待ち、受け入れた。

 葬儀屋は、両手でセバスチャンの頭の上に押さえつけていた漆黒の悪魔の両手首を、
 片手に持ち替え、自由になった片手で、
 寝台の脇に置いた死神の大鎌を手に取る。