病×2
●後病 アトヤマイ(静雄目線)
カーテンの間から、木漏れ日が落ちている事に気付いた。
何時だろうか。
そう思い、頭を上げ時計に目をやる。8時30分。朝か。今日は仕事に行けるだろうか。
これ以上トムさんに迷惑はかけたくない。その一心で、まだ熱が残る身体に力を入れ、
起き上がった。やはり、一日で風邪を治すのは、少し無理があったようだ。
「……あ。」
何もないのに、思わず言葉をあげた。昨日の事を思い出し、頭どころか脳天から
足の先までフリーズする。なんであの時、抵抗しなかったんだ。自分が忌々しかった。
けれど、何か寂しい。一人だからか、寝ていたからか。一番考えたくないのは、
――――――――――――――臨也がいないからか
いや、流石にそれは無いだろう。どうしても否定したいのだが、正直、自分の様子を
見たところ、これは事実らしい。
「やぁ、シズちゃん。」
「……?」
窓から入ってくる黒い影。また来たのか。心の中で嬉しいとうんざりが混ざった。
「風邪、治ったの?やだなぁ、昨日のシズちゃん可愛かったのに。」
「死ね」
いつもの事だから、別に言っても臨也は反応すら見せなかった。
「で、治ったの?」
「……まだ微熱。」
「じゃあ寝といた方がいいよ。トムさんに迷惑掛けたくないんでしょ?風邪ってね
無理すると余計酷くなるから。まぁ、シズちゃんでもこのくらいは分ると思うけど。」
臨也は俺をベッドに押しつけた。
「はい、寝ること。寝なくてもいいからとりあえず此処にいることね。」
布団を被った俺の頭に冷たい手がのせられる。
「おやすみシズちゃん。」
俺は目を閉じた。