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【腐】熱狂的な【モブ攻】

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 いくらこちらが、あなたを慕い、あこがれ、想っていても、それらは伝わっていないんじゃないかって」


指の腹で、顎をなでられる。ふれられた部分が腐り落ちてしまいそうな、錯覚を覚えた。
そのような考えは非現実的だと、普段の自分なら切り捨てるだろうか。
男は暗澹とした目をじっとラウルに向けていた。

顎の手が離れ、胸を保護する防具に静かに添えられる。
戦場では身を守る為のそれも、この場所では全く役に立たない頼りないもののように思われた。
せめて、もの抵抗でラウルは相手の臑を足で押し、自分から引き離そうとする。
だが、戦場から退いた自身の筋力が予想以上に落ちていたせいか、それとも相手がはるかに屈強なせいなのか。太い脚は、びくともしなかった。


「なので中将……我々は考えたのです。我々の愛を、実際に体感していただこうと。 そしたら、我々の気持ちは中将の身体に刻み込まれるだろうと」


その言葉が合図だったのだろうか。周りで待機していた老若、職種が様々の男たちが一斉に服を脱ぎ始めた。
無言で無表情のまま、素早く。防具上着下着が宙を舞い、あっというまに裸になる男たち。
貧相なまでに痩せている者もいれば、取り立てて特徴のない中背中肉の者、彫刻のような筋骨隆々の者など。裸体は千差万別だ。

白い電灯に照らされたその光景は、なんだか浮き世離れしているように、ラウルには感じられたのだった。


目の前の将校は、防具の上からラウルの胸をなぞっている。
鎧、鎖帷子越しだというのに、ねっとりした手が肌を直接撫でているような気がして。
ラウルは思わず「男の胸を触って楽しいかい?」と言った。

他人ではいつも通りに聞こえるであろうその声も、自身の耳にはやや語尾が震えているのがわかるのが、情けない。
男は答える代わりに、顎をしゃくった。すると、羽交い締めしていた手がゆるみ、ラウルの身体が解放される。

腕に血が巡る温かい感触に、ほっとしたのもつかの間。今度は腕を目の前の男に捕まれ、強い力で引っ張られた。
またもやとっさの出来事だったので踏ん張ることができず、ラウルは前のめりに倒れる。

しかし、ラウルは腐っても軍人だ。(流石に腹を打ちたくないなぁ)と、床に倒れる寸前に思い、身体を反転させた。

背後に走る衝撃。冷たい床の感触。


「いたたた……」


電撃が走ったかのような鋭い痛みに、ラウルは状況を忘れて腰をさすった。
しかしその手を取られ、左右から別々の人間に引っ張られる。

まるで十字架にかけられるような形になったラウルの目の前に、将校の男が屈んだ。
自由の利く右足で蹴りあげ、目の前の男に一撃食らわせようとしたのだが、あっさりと足首を捕まれてしまう。

将校服の男は、しっかりと足を拘束したまま、ふとももを割って内側に入り、顔に顔を近づけてくる。
視線は相変わらずねっとりとしていて、吐く息は生臭く。
目を背けたくなる光景だが、誰かに頭を後ろから固定されてしまってるので、首を横に曲げそれらを拒む事すらできなかった。


目の前の男だけではなく、周囲の熱帯びた視線や息を否応なしに受け止めているうちに。
ふとラウルの脳裏に思い浮かぶものが出てきた。

これから周りの連中が自分に何をしようかわかった気がしたのだ。今更、手遅れではあるが。


「ねえ……僕はこのとおり、枯れた四十代のおじさんだよ。性的暴行をしても楽しくはないと思うけど」
「それがいかがなさいましたか。ラウル中将」


太股の下から上を、まるでナメクジが這うようにねっとりした手つきで将校服の男の手が上ってくる。
この短時間で何度も気持ち悪さを感じたが、これは格段に気持ち悪い。
思わず身震いをしてしまったラウルの頬に、別の誰かが(これは、元学生だったか)手をあてがった。


「年齢がなんです。性別がなんです。そんなことはどうだっていい。
 ラウル中将の精神に焦がれ、その崇高なる頭脳に少しでも我々の事を刻みたく、本日こちらにお呼びしたのですよ」


男は言うと、太股にあった手を静かに移動させ、ラウルの背後に回す。
そして、迷いもなく留め具部分を掴みとると、あっさりと胸部の装備を外したのだった。
防具の下にはまだ鎖帷子が残っていた。
だが、なぜだろう、それは狂信的な男たちを目の間にすると、紙のように脆弱なものに感じるのであった。

首や腕や頬の手が放れると同時に、ゆっくりと堅い床に押し倒される。
身も心もすっかり冷えきったせいで、今やラウルは何も感じないでいた。


(僕は一体ここで何をしてるんだ)

(早く、書類を完成させなきゃいけないというのに)


「受け取ってください、中将。そして、刻み込んでください。我々の愛を」

男の鋭い歯が、ラウルの首筋を突き刺した。