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学園戦争サンドイッチ

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どうしてこうなった?
僕は、いったいどこで、
選択肢を間違えちゃったんだろう。





 ドシャン。ガタン。ドガシャァアアーンッ。
 どこの漫画の世界ですかと言いたくなるような轟音が校舎中に響き渡った。
 ここは池袋にある普通の高校で、普通に生徒は授業を受けている時間。
 まるで戦場であるかのような破壊音は普通なら聞こえてくる筈がないのだが、ありえない筈の音が聞こえてきても、誰一人生徒達がそのことで騒ぎたてる事はない。
 それはここ、雷神高校では普通の事で。そして、下手に騒げば巻き込まれるのが分かっているからだ。
 鳴り止まぬ破壊音に、教壇に立っている先生から御指名がかかった。

「………竜ヶ峰」

 重々しく呼ばれる声に、指名されてしまった生徒は、あきらめたように溜息を一つついて立ち上がる。

「……………分かりました」

 教室を出て行く少年の姿をクラスメイト達は皆黙って見送った。気の毒そうだったり、頼もしそうだったり、その視線の意味は色々だ。

「次の授業に遅れても出席扱いにするように担当の先生には伝えておくから任せたぞ」

 追い討ちをかけるようにいう教師の言葉に、「はい」と返事だけは返したものの、内心では任せないで下さいと反論しつつ、その生徒は足取りも重く、恐怖の発生源のほうへ向って行ったのである。
 そう、教師に無責任にも事態の収拾を任されてしまった生徒の名前は、竜ヶ峰帝人と言って、名前だけは非常にご大層な持ち主である。ただし、本人は至って普通。むしろ男子高校生の標準からはちょっぴり下くらいの、どこにでもいるような生徒で、本来なら目立つことのない存在だったのだが。
 ひょんなことから、ついでのオマケとして校内中、彼の名を、存在を、知らぬものはないほど有名になってしまったのである。

 その理由の全ては、これから向う先にあった。

 帝人は、下駄箱で靴を履き替えると、ゆったりと中庭へ向った。今更走っていったところ手遅れだからだ。
 バキバキした音がすると思えば、中庭に埋められていた筈の記念樹の一つが超高速で空を飛んでいった。またしても、ガラスが割れる甲高い音がなり、いたるところにガラスの破片が巻き散らかされている。危険だ。ここでうっかり転んだ日には大惨事に違いない。それ以外にも、注意書きが書かれていたはずの看板から、銅像が地面に転がっている。中庭に広がる石畳はところどころかけているどころか、陥没してるところもあって、今回も後始末が大変だと、帝人は頭が痛かった。

 この普通の学園風景を、戦争区域のような風景に早変わりさせた元凶は二人。
 今日も今日とて元気に中庭で戦っているようだ。
 雷神高校名物となってしまった、24時間戦争コンビたちである。

 この笑える二つ名は、二人が顔を合わすたんびに、ちょっとしたことで時間・所構わずに喧嘩をするから、・・・それも喧嘩と言ってしまうには酷すぎる惨状に悲観した同校生徒たちがブラックジョークとして囁きだした名前である。誰が最初に言ったのか、言いえて妙なコンビ名である。
 とはいえ、さすがに面と向って二人にこの名前を呼びかける生徒はいない。
 誰だって命は惜しかった。
 命が惜しいから、この二人に積極的に関わろうとする人間は非常に少なかった。
 生徒を指導しなくてはならない教師さえも避けて通る。
 その二人に、臆せずに普通に、まったくの普通に接してしまったのが、帝人の運のつきだった。

 いやね、別に二人と仲良くなったことを後悔なんてしてないけどね。
 こうやって、二人の喧嘩を止めるのが、嫌なわけじゃないんだけど。
 今日のように二人の喧嘩を止めるために何度も授業を中断しなくちゃいけないのは、非常に困るんだよね。
 出席日数とかの問題じゃないんだよ。ま、欠席扱いされたことなんてないけど。それ以前に、授業をちゃんと受けていないと、並みの知能しか持っていない帝人は、授業内容に着いていけなくなってしまうのだ。

 だから、あれだけ喧嘩は、休み時間にやってってお願いしたのに!


作品名:学園戦争サンドイッチ 作家名:織 夢月