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川原 あゆむ
川原 あゆむ
novelistID. 29073
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ユリへ 愛を込めて

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浅い呼吸に合わせて、胸が苦しげに上下していた。
「ユリ、ユリ!おかあさんここに居るよ!」
声かけに、小さく「ニャー」と応え、手足を数度バタつかせユリは息絶えた。
実に見事な最期だった。
何もかも、計算したかのように、私の手を煩わせないように死んでいった。
葬式の日まで休日にできるように、選んでいったかのようだった。
ユリの賢さが、走馬灯のように脳裏を巡る。


-----------------------(p.4)-----------------------

私の留守中に、猫にありがちの毛玉吐きをすると、7匹のうちのユリだけがティッシュを掛けておく。
三毛猫の毛玉だから、すぐにユリだと分かる。
何か要求があると声高に呼びにきて、ボディランゲージで表現し誘導する。
みんなが大嫌いな爪切りも、ユリは自分から「切って…」と寄ってくる。タオルに引っかかった爪を大げさに振って見せて、「ほらね?」と顔を見上げる。
切っている間も、切りやすいように指を広げてくれるのだ。皆がこうだとありがたいのだが、ほとんどの猫たちは拒絶して大暴れとなる。引っかかれたり噛みつかれたりの大格闘の作業だ。ついつい避けがちになる。
ユリは、毛づくろいのブラシも大好きだった。
誰かのブラッシングを始めると、どこにいても一目散でやって来た。
そしてスリスリと私に頭をくっつけてブラッシングをせがんだ。ユリには爪切りの必要性も、ブラッシングの健康効果も分かっているかのようだった。

こんなこともあった。急いで外出した時に、ユリが居たのに気付かずにベランダに鍵を掛けた。
帰宅後にユリがいなくて探したら、洗濯物のバスタオルを引っ張って取り、床に敷いて温まっていた。どんなに寒かったことだろうか。

スーパーで買った焼き魚に中って吐き下し、苦しんだ時、ユリは一晩中一生懸命で背中を揉んで看病してくれた。
あの時は、ありがたくて涙が出た。
一人暮らしの急病ぐらい切ないものはないけれど、そんな時に心配してくれる存在は、猫とはいえありがたいものだった。

今はユリをなくして、手足をもがれたような喪失感でいっぱいの私なのだ。




-----------------------(p.5)-----------------------

愛しい愛しい大切な家族。
毎日つぶやいていた。
「ユリちゃん、長生きしてね。お母さんを一人にしないでね」そんな私の顔をまん丸の眼でじっと見ていたユリ…。
でも、仕方がないことなのか・・・。
ユリ、ありがとう。私の辛い人生をずっと傍で支えてくれた。
ありがとう、頑張って生きてくれてありがとう。
こんなに凛とした、見事な死に様を私に見せていったユリ。
あなたに恥じない最期を、私も心して迎えなければいけないね。
平成5年10月10日、初めて出会ったあの日。
いつどこで生まれたのかも分からない猫だったユリ。
あなたの姿形は猫だけれど、共に暮らす歳月の中で、あなたは私の分身のようにかけがえのない家族になった。
互いに深い情愛を交わしたゆるぎない日々。
ある時は娘に、ある時は親に、親友にと、血肉を分けた存在のような繋がりがあった。
喧嘩をしたこともあったね。プイッと拗ねて物陰に隠れたり、食器棚の上に上って、いくら呼んでも知らん振りをしていた。
世の中には「動物」との深い関わりを笑う人もいるが、人生の宝を見過ごすなんて寂しいことだと思う。

今はこの世からいなくなってしまったユリだけれど、私にはユリの気配が感じられる。
写真立ての中から、ジッと眼差しを送るユリに笑われないように、おかあさんは頑張って生きていくよ。

             合掌


-----------------------(p.6)-----------------------


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章タイトル: あとがき
-----------------------(p.7)-----------------------

二日後、嫁いでいる娘と孫も一緒に葬儀所に行き火葬した。
小さな骨壷に収まったが、歳の割りにしっかりした骨だと言われた。
小学一年の孫にとって、初めての死との対峙だった。
花束を持ってお別れに来たのだが、「死」を見ることはショックだったようだ。
核家族化した現代では、こういった経験をすることが少ないのかもしれない。
愛するものとの別れに取り乱す私を見ることも、受け入れがたいものだったろう。
動物家族との暮らしは、こういった「命」との向き合い方を学習することにも繋がるだろう。
小さな孫の『仲良しだったユリちゃんとお別れしたい』という気持ちも大事にしたかった。
娘と孫に見送ってもらい、ユリも満足だったことだろう。

私はその晩から、お骨になったユリを抱いて寝ている。
もう「ゴロゴロ」は聞こえない。
ヒゲもくすぐったくない。
しつこいくらいに擦り寄って、肩もみしてくれる柔らかい肉球はないのだ…。
とてつもなく寂しい。
他の猫たちも愛しいけれど、ユリはユリなのだ。
ユリの気配りは、他の猫たちには無い。
甘えてくる、餌をねだる、足元に纏わりつき、擦り寄ってくる。皆、愛しい家族だ。誰も居なくなって良い猫はいない。
でも、他の猫のように、自分の要求をするだけではなく、ユリは自分で考えて行動し、私を思いやってくれる猫だったのだ。
時折、襲ってくる激烈な悲しみに号泣する。
ただ、身もだえして握りこぶしで膝をたたく。
この喪失感に慣れるには、いったいどれほどの涙を枕に染ませれば良いのだろうか…。

分かっていることは一つなのに。
ユリは姿が見えなくても、私の傍にいる。
そして、いつか必ず虹の橋のたもとで、先に行った仲間たちと一緒に私を出迎えてくれることを。

              終
-----------------------(p.8)-----------------------

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