居心地のよい場所
【居心地のよい場所】
アムロは扉の前に立ち、コンコンと軽くノックをしてみたが、中からの反応は無かった。
扉の向こうにシャアが居るのは分かっている。
もう一度ノックをしたが、やはり反応は無い。
面倒くさそうに大きな溜め息を零すと「入るぞ」と、一応、一言断りを入れてから扉を開けて、身体を部屋の中へ滑り込ませた。
中は薄暗く、どこに居るのかよく分からなかったので、扉の脇にあるスイッチを押して明かりを点けた。
すると、応接セットの一人掛けソファに座り込む彼を見つけた。
アムロは毛足の長い絨毯に靴音を吸い込ませながら近づいた。
気配を消して近付いた訳でもないのだが、ソファの傍らに立ってもシャアは動く気配をみせない。
膝の上に肘を付き、組んだ掌の上に額を乗せて項垂れたままでいるのだ。
華美な装飾を施された上着は脱いでいたが、服を着替えた様子はなく、髪は未だにキッチリと後ろに撫で付けてある。
その髪型を解くため、アムロは右手を差し述べて指先を髪に絡めると、くしゃりと軽く掻き混ぜた。
その動作でようやくシャアがゆっくりと顔を上げた。
顔色は非常に悪く、血の気が引いたような有様で、酷く疲れた様子だ。
虚ろな青い瞳がアムロの顔を見つめて、切なげに細められる。
こんな様子のシャアを見たアムロは、大げさな溜め息を付いてから口を開いた。
「ヒドい面だな。麗しの総帥様がなんて顔してんだよ。綺麗な顔が台無しだぞ」
茶化す様に言ったアムロの言葉にも、シャアはまったく反応しない。
アムロは小さく息を吐いて、頭の上に乗せていた手で、彼の頭を軽くポンポンと叩いた。
「ナナイさんから聞いたよ。もぅ気にするなよ。貴方達が色々と画策してくれてるのは知っていたし、それだけで俺はすごく嬉しいよ」
アムロは暗く落ち込んでいるシャアを宥める様に話した。
しかし、穏やかな声音で伝えた言葉にも、シャアは押し黙ってただアムロを見つめているだけだった。
「奴等のする事なんて毎度の事じゃないか。それに俺は貴方に言ったろ?『期待しないで待ってる』ってさ」
「・・・それでも私は・・」
シャアがようやくぼそりと呟いた。
「私は君に翼を返したかったのだ」
重苦しい声でそう零した。
* * *
アムロは扉の前に立ち、コンコンと軽くノックをしてみたが、中からの反応は無かった。
扉の向こうにシャアが居るのは分かっている。
もう一度ノックをしたが、やはり反応は無い。
面倒くさそうに大きな溜め息を零すと「入るぞ」と、一応、一言断りを入れてから扉を開けて、身体を部屋の中へ滑り込ませた。
中は薄暗く、どこに居るのかよく分からなかったので、扉の脇にあるスイッチを押して明かりを点けた。
すると、応接セットの一人掛けソファに座り込む彼を見つけた。
アムロは毛足の長い絨毯に靴音を吸い込ませながら近づいた。
気配を消して近付いた訳でもないのだが、ソファの傍らに立ってもシャアは動く気配をみせない。
膝の上に肘を付き、組んだ掌の上に額を乗せて項垂れたままでいるのだ。
華美な装飾を施された上着は脱いでいたが、服を着替えた様子はなく、髪は未だにキッチリと後ろに撫で付けてある。
その髪型を解くため、アムロは右手を差し述べて指先を髪に絡めると、くしゃりと軽く掻き混ぜた。
その動作でようやくシャアがゆっくりと顔を上げた。
顔色は非常に悪く、血の気が引いたような有様で、酷く疲れた様子だ。
虚ろな青い瞳がアムロの顔を見つめて、切なげに細められる。
こんな様子のシャアを見たアムロは、大げさな溜め息を付いてから口を開いた。
「ヒドい面だな。麗しの総帥様がなんて顔してんだよ。綺麗な顔が台無しだぞ」
茶化す様に言ったアムロの言葉にも、シャアはまったく反応しない。
アムロは小さく息を吐いて、頭の上に乗せていた手で、彼の頭を軽くポンポンと叩いた。
「ナナイさんから聞いたよ。もぅ気にするなよ。貴方達が色々と画策してくれてるのは知っていたし、それだけで俺はすごく嬉しいよ」
アムロは暗く落ち込んでいるシャアを宥める様に話した。
しかし、穏やかな声音で伝えた言葉にも、シャアは押し黙ってただアムロを見つめているだけだった。
「奴等のする事なんて毎度の事じゃないか。それに俺は貴方に言ったろ?『期待しないで待ってる』ってさ」
「・・・それでも私は・・」
シャアがようやくぼそりと呟いた。
「私は君に翼を返したかったのだ」
重苦しい声でそう零した。
* * *