温もりと間接キスとカラス
翌朝、緑川は不思議に思っていた。
(椿の様子が変だ…)
確かに椿はいつもの練習よりも少しギクシャクしている感じがあった。
それに、監督、達海に対して。
不調なら、不調で何もかもガクガクしているはずなのだが
今日はそれとは違う感じがただよっていた。
達海はいつもどおりに椿につっこみを入れる。
「おーい、椿ーそこ、入りすぎんなよー」
「は…はいっ!すみません…」
(んー…?やっぱいつもどおりなのか?)
「はあ~…」
有里はカメラを構えてため息をついた。
「有里?何ため息ついてんだよ、幸せ逃げるぜ?」
「今日、良い写真がとれないなぁって思って」
これも不調っていうものなのかな、と有里はつぶやいた。
「ふーん、お前も不調ってのがあるんだな」
「達海さんはなさそうですね。いつも快調みたいで」
「うん。ないね。不調といえば、今日椿の様子が変なんだよなー」
有里はえっ?と7番ゼッケンを見た。
「プレーはそんな不調には見えないけど…」
「…俺、なんかしたかなぁ…」
「達海さんに対してなんですか?!」
うーん、と有里はうなった。
「思い当たることは?」
「ない!」
でしょうね。
作品名:温もりと間接キスとカラス 作家名:rana