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【Alwaysシリーズ 2 】 The light

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朝はベーコンエッグに決まっていた。
だけど、まさかそれを自分が作るようになるとは思ってもいなかった。

小さな音の目覚まし時計を止めると、背中から抱え込むようにして、自分を抱きしめて眠っている相手の腕をほどいてベッドから下りる。
その物音にいっしょの大きなベッドで寝ていた犬たちも、めいめいに顔を上げた。

手早く着替えてそっとドアを開いてとなりの部屋へと歩いて行くドラコのあとを、その5匹は大きなからだでゾロゾロとついてくる。
まるで親カルガモに付いていく雛たちの行進のようだ。

「―――シッ!まだ少し早いから、静かにしていろよ、お前たちは」
ドラコは笑いながら指示を出すと、犬たちはおとなしくじゅうたんが敷き詰められた床に座り込む。
聞き分けのいい犬たちに軽く頷き、ドラコはキッチンへと入っていった。

少し伸びすぎてしまった髪の毛が目にかかってうっとおしいので、(明日にでも、切りに行こう)と思いつつ、朝食を作るための食材を冷蔵庫の中から取り出していく。
ガスコンロの使い方も、今では慣れたものだ。

卵を割って、ベーコンを焼く。
トースターにパンをセットした。
牛乳は温めてホットにして、ハチミツを少し入れる。
ハリーはこのほうが気に入っているらしい。
レタスを手で千切りつつ、床に寝そべっている犬たちに話しかけた。
「ハリーを起こしてきてくれるかい?」

犬たちはドラコの言葉を理解したように、パッと顔を輝かせると勢いよく隣部屋へと走っていく。
もちろん一匹だけではない。
全部で5匹の大型犬がドドドと開いていたドアの中へと消えていった。

ものの1分とかからないうちに、寝室から「ぎゃーっ!やめろっ!舐めるな!僕の上に乗っかるな。重たいだろ」という悲鳴が響く。
ドラコはその声を聞き笑いながら、朝食の乗ったプレートをテーブルへと運んだ。

ハリーは「まったく、お前たちときたら……」とぶつくさ文句を言いつつ、犬たちを引き連れてベッドルームからこの部屋へと入ってくる。
パジャマのまま、髪の毛はまだ寝癖が付いてくしゃくしゃで、少し眠たそうな顔で眼鏡をかけた。

ベッドルームはカーテンが閉まったままだったから、この部屋の朝日が差す明るさに、少しまぶしそうに瞬きをして、椅子に腰掛けているドラコを見つけて、「おはよう」と笑った。
椅子を引いて相手と向かい合うように座ると、少し伸びをしてテーブル越しに、ドラコのほほに朝のキスをする。
ドラコは目を細めてそれを受けた。

ハリーは目の前の暖かい湯気が立っているカップに口をつけながら、一応ドラコにお願いをしてみる。
「あのさ、朝は犬のドラコたちじゃなくて、僕は君に起こしてもらいたいんだけど。毎朝あいつらに舐められて顔中がベタベタだし、あのでかい体が何匹も僕の上に容赦なく乗ってくるんだよ。どうにかならないかな?」
「それは諦めろ、ハリー。僕が起こしに行って、君が素直に起きたことがあったか?」
「──そりゃ、君が起こしにきたら別の意味で、やっぱり早く起きれないかもしれないよな。うーん……」
ハリーは笑って頭をかいた。

朝、起こしにきたドラコをそのままなし崩し的にベッドに引き込んでしまい、ハリーは会社に遅刻したことが何度もあるからだ。ドラコは肩をすくめる。


朝日の中でドラコは優雅にナイフとフォークを動かしていた。
犬たちは大人しくドラコの周りに取り囲むようにして行儀よく座り込んでいる。
どうやらこの5匹はもう主人をハリーではなく、ドラコに鞍替えしてしまったらしい。
別にそれに不満などない。

きれいなドラコに、美しい毛並みの5匹の犬がいて、見ているだけでハリーは押さえきれないほどの思いが溢れて、胸がいっぱいになってしまう。

ドラコがまさか自分のために料理をしてくれるなんて思いもしなかった。
こういうふうに当たり前のように、いっしょに暮らしてくれるなんて思いもしなかった。

部屋は小さくて狭いし、犬はたくさんいて、細々とした雑用もあるのに、別段ドラコは文句も言わない。
ここにいるのが当たり前のような顔でハリーの前にいた。

フフフとハリーは笑いながら、つい甘えたように言ってみた。
「今日の夜はビーフシチューがいいな」
「分かった」
あっさりとドラコは頷く。

料理を自分が作るということに、別にドラコは不満を漏らすことはない。
本に書いてあるとおり材料を買ってきて作れば、それは出来上がったからだ。
魔法薬を調合するようにすればいいだけで、その授業が得意だったドラコは調理にまごつくこともない。

しかもハリーは涙ぐみそうな勢いで、ドラコが作った料理を両手離しでとても喜んでくれた。緑の瞳を輝かせて、本当に嬉しそうに笑う。


―――ドラコはハリーの、その笑顔を見るのが大好きだった。


ハリーは深く相手を見つめて言った。
「ありがとう、ドラコ。僕に食事を作ってくれてありがとう」
「気にするな、僕の食事でもあるんだからな」
「犬の散歩も手入れもしてくれてありがとう。とても手間がかかるだろ?」
「手間はたしかにかかるけど、僕がしたくてしているんだ。」
ハリーはドラコの言葉に何度も頷く。

「えっと、それから。掃除してくれてありがとう」
「シーツを毎日取り替えてくれてありがとう」
「花に水をやってくれてありがとう」
「おいしい食事をありがとう」
「それから――」
ハリーは続けざまに「ありがとう」を何度も言い続けた。
ドラコはその言葉に首を傾げて相手を見ると、ハリーは真剣な顔でドラコを見詰めている。

ドラコは持っていたフォークをテーブルに置くと突然立ち上がり、歩いてハリーのとなりに立った。
不思議そうな顔でドラコを見上げているハリーに手を差し伸べると、ドラコはそっとかがんでその前髪をかき上げて、おでこにやさしくキスをする。
相手の瞳をじっと覗き込んでふっと柔らかく笑って、自分の胸にハリーを抱きしめると、その頭をなでた。

「よしよし、ハリー……」
ぎゅっと抱き寄せると、ハリーは嬉しそうにそのドラコの胸にほおずりをして、顔をうずめる。
「今日もあしたも、あさっても、ずっとずっと、お前のそばにいるからな。ちゃんと食事も作っておいてやる。急に消えたりしない。僕の帰る家はここだ。」
ドラコは目を細める。

「だから、そんなに感謝しなくてもいいから。もう安心していいから……」
ハリーはまるで自分が小さい子どものような顔になって、嬉しそうに笑う。
「夢みたいだ」
ハリーはとても満足そうな顔をした。

ドラコはそれを見ながら、チラリと壁掛け時計に視線を走らせる。
「いや、残念だけど、これが現実だ、ハリー。もう7時43分だ。会社に遅刻するぞ。早く着替えろ」
「えっ!もうそんな時間?」
慌ててハリーは顔を上げる。
急いで朝食をかきこむと、バタバタを慌てたように着替えはじめた。

ドラコは肩をすくめて、大人しく床に伏せて待っていた犬たちの朝食の用意を始める。
犬たちはドッグフードの缶に手を伸ばしたのに気づくと、途端に元気よく立ち上がり、ドラコのまわりをグルグルと回って、尻尾を千切れるほど振った。