キミと手を繋ぐまで
「う、うん。……ごめんね、留さん。用具委員会忙しいんじゃないの」
「なあに言ってんだよ、いまさら」
ニカリと裏表のない笑顔で「ほら、さっさと乗れ」と伊作を促す。たしかにこのままここにいても仕方がないと、自分よりもたくましいその肩にてのひらを乗せた。
「おまえ、こんなに泣き虫で大丈夫なのかよ、ほんと」
「だ、大丈夫だよ」
「でもなあ、いつまでも俺が、」
留三郎は不自然なくらいぶつりと、そこで言葉を切った。伊作自身もどうすればいいのかわからず、黙ってうつむく。
いつまでも俺が、傍にいれると思うなよ。
きっと留三郎はそう言おうとして、言葉を飲み込んだのだろう。
そんなことわかっている。自分たちはこの学園の最上級生で、来年の桜が咲くころにはここを離れなくてはいけない。武闘派の彼と、忍者に向いていないと言われる自分とでは、きっと仕える城も違うだろう。
こういうとき、嘘でも良いからこの場しのぎにと優しい言葉を吐かない彼が好きだ。
けれど一緒に居続けるという未来をすでに捨ててしまっている彼のことを、残酷だとも思う。
愛しさと悲しさ。そのふたつを抱きしめるように、伊作は留三郎の背中にしがみついて目を閉じた。