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ルマエリ・ギルエリ・エリ→ロデで吸血鬼パロ

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いや、どういうことだ、恋愛相談してるわけじゃないのに。
しかし、とギルベルトは考えた。
「そういえば、お前がさっさと結婚しちまえばあの吸血鬼にも狙われなくて済むんじゃねーの?」
エリザベータは勢い良く顔を上げ、それからその意味するところに思い当たったのかフライパンを振りかざした。
「簡単に言ってくれるじゃないの…! お言葉通り、嫁き遅れで吸血鬼に目星つけられてるような女を相手に求婚するような男は売り切れてるのよ!」
「昔求婚してきた男とか、当たってみろよ!」
「みんなもうとっくに可愛い奥さんと子供に恵まれてるわよ!」
「一生吸血鬼に食われ続けたくなかったらなんとかしろよ! ずっと守ってやれるわけじゃねえんだし!!」
振り下ろされるフライパンの柄をしっかと握って鉄槌を食い止めたギルベルトは必死だ。
「一般人を魔物から守ることこそあんたたちの仕事でしょ!?」
「じゃあローデリヒに頼んで来…っ」
言いかけた途端、フライパンをごりごり押し込んでいた馬鹿力が緩んだ。
「…一晩だけ、とか、言ったら聞いてくれるかしら」
エリザベータの緑色の瞳が、見たことのない色を含んでつやつやに潤んでいる。
「ギル、ねえ」
ネクタイを掴まれて、身を乗り出すように顔を近づけられてギルベルトは固まった。
恋する女の匂いがする。
「ローデリヒさんは、お仕事でお願いしたいって言ったら、軽蔑するかしら」
最悪だ。
ギルベルトは背筋を駆け上がるぞわぞわした感覚に戦慄した。
「もう、どこへもお嫁に行けないのなら、それでもいいの。ただ、わたし、一度だけでも」
最悪だ、本当に最悪だ。
叶わない恋をしている女の匂いがエリザベータから漂ってくるというその事実がもう、最悪だ。
一夜の相手を求められて、ローデリヒがどう思うかなんてギルベルトがわかるはずがない。
最悪だ。この質問にイエスと答えれば彼女は軽蔑されるような策を弄した自分を恥じるし、ノーと答えればローデリヒに同衾を求めに行ってしまう。
最悪だ、最悪だ、最悪だ。
警報のように繰り返されるその一言が、ギルベルトの意識をかき回して、見たくもなかった事実を浮かび上がらせる。
こいつはなんかもっとこう、傲慢なくらい燦々と陽の当たる場所で幸せに生きていなくちゃいけない女だ。
幸せになれないエリザベータなんか、あってはいけない。
そんな風に思うギルベルトが、エリザベータに抱いているこの感情の塊は、つまり。
「気持ち悪いって思われないかしら」
フライパンを握りしめたまま眉尻を下げる幼馴染にイエスもノーも答えないまま、ギルベルトは決意を固めた。
「次の満月までに、あの吸血鬼ぶっ殺してくる」
不毛な妖魔大戦が今、幕を開けようとしていた。