君と僕~西浦バッテリー~
オレも行く、と2番と4番が言いだし三人で行くことになった。
皆が帰り三人は自転車を漕いでキャッチャーの家へ行く
蝉が鳴くなか家に着いた。
チャイムを鳴らすと家の中から走る音が聞こえてきて扉が開く、
「いらっしゃい!」
出て来たのはキャッチャーの弟と見られる少年だった。
「ちわー」と4番。
「弟?」2番。
「はい! あのっ 荒シーの人ですよね?」
弟くんが4番に声をかけた
「おお」
「オレ 川口イーグルスです!」
「へー、イーグルスなのか!」
「荒川シープリズム今年も関東優勝しましたね!」
二人の間で盛り上がる
「どーぞあがってください!」
客間にキャッチャーはいた、
足を座布団を重ねたところに乗せ座椅子に座っている
「うっすー」
「よぉ、座布団適当に使ってな」
「ここ客間?」
2番が周りを見回しながら行った
「オレ部屋2Fで昇り降りキツイから安静中はここにいんだよ」
「そっか ヒザだもんな」
「イヤ 介護側が」
「あ なるほど」
「そーだヒザ!」
弟くんとどこかに行っていた4番が戻ってきた
「お前新人戦どーなの?」
「ギリギリ間に合う」
「!」
間に合う・・・その言葉にピッチャーが反応する
他の三人が話をする中ピッチャーはずっと黙ったままだ、
間もなくして弟くんが出前を取るから皆なににするか聞いてきた。
2番は弟を家で待たせてるからとピッチャーを
キャッチャーの前に座らせ一言声をかけて帰っていった。
4番は出前にカツ丼を頼んだ後
素振りを見てほしいと弟くんに頼まれ庭に行ったところだ。
少しの間沈黙が広がる。
「何 食う?」
「・・・・・・・・・カ・・・・・・テン・・・ウナ・・・」
「何食うんだよっ」
絶えかねたキャッチャーが声をあげる
「ふひっ!・・・カッ ウ・・・ウナッ」
キャッチャーがテレビをつけた。
「・・・・・・カツ丼とウナ重だな!」
「カッカカッ カツ丼でっ」
キャッチャーが出前を頼む電話をかける・・・
・・・・・・・・・
――がんばる ぞ。ちゃんと・・・話すんだ!
ピッチャーがそんなことを考えている時に
テレビが高校野球の代表校が決定したことを伝えていた。
ピッチャーの足元に新聞が投げられる
「その新聞今日の結果載ってんぞ」
「うお 早い」
「夕刊だからな」
「へ へぇ」
「・・・・・・負けちったな」
不意にキャッチャー声をかけてきた
「うん」
ピッチャーは弱々しい生返事しかできなかった
テレビの電源が落とされる・・・・・・
「メールの―――」
「へへっ返信しなっくてっ ごご ごめんなさいっ」
ピッチャーが慌てて謝る
「あー、もー件名はいいから内容の方」
呆れたふうに言った。
「あ 話、オ オレもあっある」
「何?」
自分から言ったのに対しなかなか話し出さないので
キャッチャーの方が先に話をすると言い、座椅子にもたれ掛かっていた体を起こした。
「オレ約束破ったから ごめん!」
キャッチャーが深々と頭を下げる。
「・・・あ・・・の え」
「ケガも病気もしねーで お前の投げる試合は全部捕るって・・・言っただろ?」
困惑しているピッチャーに分かりやすく言った。
「あ アレはオレ 情けないから 安心」
ほかからしたら何を言っているのか分からないような言い方をしていたが
それを読み取ったキャッチャーが言い返そうとする
「そーだけど! オレが捕りゃお前が自信持つってのがオレは・・・・・・嬉しかったのに・・・」
――ケガして 途中退場・・・・・・っ
辛そうに顔をゆがませる
「悔しいからあやまらせろよ! ごめん!」
またも頭を下げる
「うっうん」
「それから はじめて会った時、首振んなっつってごめん。あれはオレの間違いだったごめんな」
キャッチャーの言葉にピッチャーの目が見開かれる・・・
ピッチャーが今日の試合について話し出した。
それから自分がいいたかったことをゆっくりとぽつぽつと話し出した。
「オレは頼るばっかだった」
一生懸命話すピッチャー。
「オレ オレがんばるから 阿部君、オレを頼ってくれ」
それは気弱なピッチャーからでたとても力強い言葉だった。
「わかった 力を合わせて強くなろう!」
ピッチャ―の強い言葉にキャッチャーが答えた。
「うん!」
ピッチャーがキャッチャーに向かって笑った。
――笑った とこはじめて見た ぞ
ピッチャーの笑顔や言葉にキャッチャーは
今まで自分が感じてたのは考え違いだったのかもな・・・、と考え始めていた
そのあと今日の反省会のことをピッチャーから聞き
自分の目標も甲子園優勝に帰ることを告げた
「メシだよーっ」
「食おーぜいっ」
4番と弟くんが出前を持って戻ってきた。
皆でご飯を食べ、ピッチャーたちはそろそろ帰ることにした。
「そんじゃーお大事にな」
「ご ごちそーさま でした」
帰り際家の前までキャッチャーとその弟くんが見送りに出てきていた。
「今日はありがとな」
「あ あのお大事にっ」
「合宿は行くから そん時またな」
「うんっ」
ピッチャーがキャッチャーに笑顔を向けた
「じゃーなー」
そう言って二人は帰っていった、
「ねーねー、もう一人の人なんつー人?」
二人が帰ったあと弟くんが聞いてきた。
「三橋?」
「あぁピッチャーの人? なんかイイ笑顔の人じゃん」
オレはスキなカンジだよ、といってきた。
「・・・・・・・・・はーあ」
「え 何?」
「お前苦労ね―なー」
弟に向かってため息をつきそんなことを言っていたが
キャッチャーの機嫌は頗る良かった。
そんなことがあってお互いが近づいた二人・・・
まだまだ困難なことはたくさんあるが
そんなときは少しずつ進んでいけばいいんだ、
いつか甲子園のマウンドに立つために―――――・・・・・・
作品名:君と僕~西浦バッテリー~ 作家名:日向 悠一郎