Sweet Food
ハリーは笑いながら、右のほほを指し示した。
「ほらここ、砂糖が付いているよ」
大きな口をあけてドーナツをほおばったまま、ロンは答える。
「―――えっ、そうなの?ふーん。まぁいいや。あとから拭くよ。今はまだオヤツの最中だしなー」
嬉しそうに粉砂糖がいっぱいかかったコテコテに甘そうものを、ロンは勢い込んで食べ続けていた。
そのついでに自分を注意した相手を見て苦笑する。
「そういうハリーだって、かなりひどいよ口の周り。真っ黒だ!」
「やっぱり?!」
口のまわりをチョコだらけにしてハリーも笑い返した。
手には彼をチョコまみれにした、見ただけで胸焼けしそうな甘ったるいドーナツを持っている。
しかもまたもう一個も手に取ろうとしていた。
このドーナツはかなりイケルらしい。
ふたりは顔や手をベタベタにしながら、それを食べることに夢中になっていた。
「でもきっと、今の君をおばさんが見たらハンカチ持って、『あらあらロニー坊やはお砂糖まみれで生まれてきたのかしらねー。ヨチヨチ』とかと言うぜ」
「言う言うー!絶対にかーさんなら言うね。今でも、あのでっかいチャーリー兄さんですら、小さな子供扱いにするんだから、僕なんてオムツしているように見えたりしてね」
「じゃあ、君の妹のジニーなんてまだお腹の中だ!」
「ぶはーっ!ありえねーっ!」
ふたりははじけたように笑い転げる。
大爆笑して足を踏みならし、目を細めて肩を震わせて笑った。
日曜の午後はのんびりとしていて、暖かな日差しが差し込む大広間は笑い声に満ちている。
―――ドン!
何かテーブルの脚を蹴りつけるような鈍い音がした。
冷たい視線を背中に感じて、ロンは音のしたほうへと振り向く。
怒った不機嫌な顔で銀髪の彼が自分たちのほうをにらみつけていた。
(―――マルフォイか!あんなイヤなヤツがいたとはね)
眉を寄せて、フンと鼻を鳴らした。
(なんで日曜日にここにいるんだ?いつも休日には学校にいたことがないくせに。あの子分の二人を引き連れて、いろいろ遊んでいるって噂だったけど、どうしたんだろ?)
一人で珍しく座っている彼を胡散臭げに、じろじろと観察する。
ドラコは四六時中制服のロンたちとは違い、グレーのパンツにくすんだスリザリンカラーの緑色のセーターを着ていた。
見るからに上質そうな服装だ。
彼が持つ雰囲気を壊すことなく逆に引き立てるような服を選ぶのは、彼自身のセンスのよさだと思う。
(……まぁ、あいつは見てくれだけはいいよな。本当に見てくれだけだ。口を開いたら、最低で最悪だけど)
ロンは肩をすくめた。
ドラコはずっと目をそらさずに、自分たちいるテーブルをにらみ続けている。
(ものすごい顔でこっち見ているけど、笑い声がそんなにうるさかったのかな?やはり手づかみで食べるという、このマナーの悪さかな?やっぱりそのふたついっしょだからか、なおさら怒っているのか?)
いつもだったらロンと目が合うとすぐ人をバカにしたような笑みを浮かべるのに、今日はその素振りすら見せていない。
かなりきつい視線をこちらのほうに向けていた。
(変なヤツ!とりあえず、あんなヤツのことを考えるなんてバカなことだ。気分が悪くなる!それよりも、今日の午後は何しようかな?おいしいおやつは山盛りだし、今日は休日だし、まだ半日は遊ぶ時間がある。)
ロンはうきうきともう一個、ドーナツを手に取った。
ハーマイオニーはふたりの下らない話に痺れを切らしたのか、不機嫌そうな顔で文句を言い始める。
「ちょっと、いい加減にしなさいよ。そんなもの持って動かないで頂戴!その粉砂糖が飛んできて、大切な本に付いちゃうじゃない!」
プリプリと彼女は怒った。
本当は食べたくてしょうがないくせに、女の子の宿命「ダイエット」を決行中なので、そんなものは一切口にしていない。
ノンシュガーの紅茶ばかりをガブガブ飲んでいた。
大広間の日曜の午後なんて、持ち込んだおやつを食べている連中か、バカバカしいホグズミードで買ってきたおもちゃの実験などをしているだけだ。
派手なクラッカーのような音が背後からして笑い声がドッと起こっている。
その一角に陣取り、ハリーとロンは仲良く山盛りのドーナツをほおばり、ハーマイオニーはいつものように明日のための予習をしていた。
カリカリする彼女を見てロンは笑いながら、自分たちの前にある皿をハーマイオニーに押し出した。
「食べちゃいなよ。おいしいよ!ハリーが作り方をドビーに教えて、作ってもらったんだよ。ドーナツなんてお菓子は、こっちじゃないからね。この学校のデザートなんて、シロップたっぷりの重たいお菓子や歯が折れそうなヌガーばかりだし。マグル出身の君は、こっちのほうが好きなんじゃないの?」
ハーマイオニーのご機嫌をとろうとする。
兄弟が多い彼は相手の機嫌を直すことくらい簡単なものだ。
たくさんの人間に囲まれて育ったロンは、普通の人より相手とのコミニュケーション取り方が非常に上手だった。
「いやロン、ドーナツはお菓子じゃなくて、パンだと思うけど」
ハリーが口を挟んできた。
「いや、こんな甘いのはお菓子だ」
ロンが負けずに言い返してくる。
「なに、パンだよ」
「菓子だ!」
「パンだ!」
とふたりはドーナツを持ったまま、言い争いを始めた。
ハーマイオニーは困った顔でふたりを見る。
かなり低レベルなことで言い合っている彼らが、ひどく子供っぽく見えるのだろう。
「ふぅー」とため息をつき、一番この皿の中でカロリーが低そうなプレーン味のドーナツを手に取ると、誘惑に負けてパクリと口に含む。
彼女がその甘さに口元をほころばすと、ロンもハリーもケンカをやめて笑った。
女の子はやっぱり笑っていたほうが断然かわいいからだ。
そうやって彼らは入学以来、仲良く3人でともに行動していた。
それはずっ卒業まで変わらないし、そのあともこの友情は続くものだと確信している。
一人で平気で5個も平らげて満足そうに紅茶をすすると、「さて」とハリーが立ち上がった。
「ちょっと夕食までの腹ごなしに、箒にでも乗ってくるよ」
「じゃあ、わたしは図書室で本を探そうかしら。明日必要になるものが見つかるといいんだけど」
と本をとじて彼女も立った。
ふたりの視線が座っているロンに注がれる。
「あなたはどうするの?」という感じで。
ロンはどちらから誘われてもイヤだった。
(何が悲しくて、休日に箒に乗るなんて疲れることしなきゃならないんだ?箒は必要なときに乗ればいいじゃないか。シーカーでもない僕には全く関係ない。もちろんハーマイオニーと図書館なんて絶対にヤダ!もう活字なんか一文字たりとも見たくはない。薄暗くて静まり返ったあんな辛気臭い場所へ行くなんてうんざりりだ)
ロンは肩をすくめて、「部屋で昼寝するよ」と答えた。
「まぁ、ロン!食べてすぐ寝ると太るわよ!」
ハーマイオニーが注意する。
「いや多分僕の場合、栄養は横に付くんじゃなくて、縦に付くんだと思うよ。毎日1インチずつ伸びているような感じがするんだ。だってこのズボンのすその、ひどすぎる短さを見てくれ!」
ロンは立ち上がって足を出す。
「ほらここ、砂糖が付いているよ」
大きな口をあけてドーナツをほおばったまま、ロンは答える。
「―――えっ、そうなの?ふーん。まぁいいや。あとから拭くよ。今はまだオヤツの最中だしなー」
嬉しそうに粉砂糖がいっぱいかかったコテコテに甘そうものを、ロンは勢い込んで食べ続けていた。
そのついでに自分を注意した相手を見て苦笑する。
「そういうハリーだって、かなりひどいよ口の周り。真っ黒だ!」
「やっぱり?!」
口のまわりをチョコだらけにしてハリーも笑い返した。
手には彼をチョコまみれにした、見ただけで胸焼けしそうな甘ったるいドーナツを持っている。
しかもまたもう一個も手に取ろうとしていた。
このドーナツはかなりイケルらしい。
ふたりは顔や手をベタベタにしながら、それを食べることに夢中になっていた。
「でもきっと、今の君をおばさんが見たらハンカチ持って、『あらあらロニー坊やはお砂糖まみれで生まれてきたのかしらねー。ヨチヨチ』とかと言うぜ」
「言う言うー!絶対にかーさんなら言うね。今でも、あのでっかいチャーリー兄さんですら、小さな子供扱いにするんだから、僕なんてオムツしているように見えたりしてね」
「じゃあ、君の妹のジニーなんてまだお腹の中だ!」
「ぶはーっ!ありえねーっ!」
ふたりははじけたように笑い転げる。
大爆笑して足を踏みならし、目を細めて肩を震わせて笑った。
日曜の午後はのんびりとしていて、暖かな日差しが差し込む大広間は笑い声に満ちている。
―――ドン!
何かテーブルの脚を蹴りつけるような鈍い音がした。
冷たい視線を背中に感じて、ロンは音のしたほうへと振り向く。
怒った不機嫌な顔で銀髪の彼が自分たちのほうをにらみつけていた。
(―――マルフォイか!あんなイヤなヤツがいたとはね)
眉を寄せて、フンと鼻を鳴らした。
(なんで日曜日にここにいるんだ?いつも休日には学校にいたことがないくせに。あの子分の二人を引き連れて、いろいろ遊んでいるって噂だったけど、どうしたんだろ?)
一人で珍しく座っている彼を胡散臭げに、じろじろと観察する。
ドラコは四六時中制服のロンたちとは違い、グレーのパンツにくすんだスリザリンカラーの緑色のセーターを着ていた。
見るからに上質そうな服装だ。
彼が持つ雰囲気を壊すことなく逆に引き立てるような服を選ぶのは、彼自身のセンスのよさだと思う。
(……まぁ、あいつは見てくれだけはいいよな。本当に見てくれだけだ。口を開いたら、最低で最悪だけど)
ロンは肩をすくめた。
ドラコはずっと目をそらさずに、自分たちいるテーブルをにらみ続けている。
(ものすごい顔でこっち見ているけど、笑い声がそんなにうるさかったのかな?やはり手づかみで食べるという、このマナーの悪さかな?やっぱりそのふたついっしょだからか、なおさら怒っているのか?)
いつもだったらロンと目が合うとすぐ人をバカにしたような笑みを浮かべるのに、今日はその素振りすら見せていない。
かなりきつい視線をこちらのほうに向けていた。
(変なヤツ!とりあえず、あんなヤツのことを考えるなんてバカなことだ。気分が悪くなる!それよりも、今日の午後は何しようかな?おいしいおやつは山盛りだし、今日は休日だし、まだ半日は遊ぶ時間がある。)
ロンはうきうきともう一個、ドーナツを手に取った。
ハーマイオニーはふたりの下らない話に痺れを切らしたのか、不機嫌そうな顔で文句を言い始める。
「ちょっと、いい加減にしなさいよ。そんなもの持って動かないで頂戴!その粉砂糖が飛んできて、大切な本に付いちゃうじゃない!」
プリプリと彼女は怒った。
本当は食べたくてしょうがないくせに、女の子の宿命「ダイエット」を決行中なので、そんなものは一切口にしていない。
ノンシュガーの紅茶ばかりをガブガブ飲んでいた。
大広間の日曜の午後なんて、持ち込んだおやつを食べている連中か、バカバカしいホグズミードで買ってきたおもちゃの実験などをしているだけだ。
派手なクラッカーのような音が背後からして笑い声がドッと起こっている。
その一角に陣取り、ハリーとロンは仲良く山盛りのドーナツをほおばり、ハーマイオニーはいつものように明日のための予習をしていた。
カリカリする彼女を見てロンは笑いながら、自分たちの前にある皿をハーマイオニーに押し出した。
「食べちゃいなよ。おいしいよ!ハリーが作り方をドビーに教えて、作ってもらったんだよ。ドーナツなんてお菓子は、こっちじゃないからね。この学校のデザートなんて、シロップたっぷりの重たいお菓子や歯が折れそうなヌガーばかりだし。マグル出身の君は、こっちのほうが好きなんじゃないの?」
ハーマイオニーのご機嫌をとろうとする。
兄弟が多い彼は相手の機嫌を直すことくらい簡単なものだ。
たくさんの人間に囲まれて育ったロンは、普通の人より相手とのコミニュケーション取り方が非常に上手だった。
「いやロン、ドーナツはお菓子じゃなくて、パンだと思うけど」
ハリーが口を挟んできた。
「いや、こんな甘いのはお菓子だ」
ロンが負けずに言い返してくる。
「なに、パンだよ」
「菓子だ!」
「パンだ!」
とふたりはドーナツを持ったまま、言い争いを始めた。
ハーマイオニーは困った顔でふたりを見る。
かなり低レベルなことで言い合っている彼らが、ひどく子供っぽく見えるのだろう。
「ふぅー」とため息をつき、一番この皿の中でカロリーが低そうなプレーン味のドーナツを手に取ると、誘惑に負けてパクリと口に含む。
彼女がその甘さに口元をほころばすと、ロンもハリーもケンカをやめて笑った。
女の子はやっぱり笑っていたほうが断然かわいいからだ。
そうやって彼らは入学以来、仲良く3人でともに行動していた。
それはずっ卒業まで変わらないし、そのあともこの友情は続くものだと確信している。
一人で平気で5個も平らげて満足そうに紅茶をすすると、「さて」とハリーが立ち上がった。
「ちょっと夕食までの腹ごなしに、箒にでも乗ってくるよ」
「じゃあ、わたしは図書室で本を探そうかしら。明日必要になるものが見つかるといいんだけど」
と本をとじて彼女も立った。
ふたりの視線が座っているロンに注がれる。
「あなたはどうするの?」という感じで。
ロンはどちらから誘われてもイヤだった。
(何が悲しくて、休日に箒に乗るなんて疲れることしなきゃならないんだ?箒は必要なときに乗ればいいじゃないか。シーカーでもない僕には全く関係ない。もちろんハーマイオニーと図書館なんて絶対にヤダ!もう活字なんか一文字たりとも見たくはない。薄暗くて静まり返ったあんな辛気臭い場所へ行くなんてうんざりりだ)
ロンは肩をすくめて、「部屋で昼寝するよ」と答えた。
「まぁ、ロン!食べてすぐ寝ると太るわよ!」
ハーマイオニーが注意する。
「いや多分僕の場合、栄養は横に付くんじゃなくて、縦に付くんだと思うよ。毎日1インチずつ伸びているような感じがするんだ。だってこのズボンのすその、ひどすぎる短さを見てくれ!」
ロンは立ち上がって足を出す。
作品名:Sweet Food 作家名:sabure