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Sweet Food

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ドラコが真剣に自分と向き合っていないことぐらい、分かりきっている。
尊大でえらそうな態度で自分を見下してばかりだ。
あの歯牙にもかけない素振りで、ニヤニヤ笑ってばかりいる。
(だからこいつは心底大嫌いなんだ!)と思った。
ロンの中である怒りのベクトルが一番高いのは、この目の前にいる相手だ。

何をしても癇に障る、本当にイヤなヤツだった。
(僕のことをちゃんと見もしないくせに、何言ってやがる!)
ロンは低くうなった。

ドラコは難しい顔をして、じっとそんなロンの顔を見ている。
何かを思いあぐねている様子だ。
言いたいことがあるのに言えなくて困っている感じがした。

何度か手を不自然に上下させて、口を開いたり閉じたりしたが、やがて思い切ったように覚悟を決めたのか、自分のポケットに手を突っ込み、何かを取り出した。

ドラコは小さな包みを取り出すと、その金色のパッケージを無造作に破る。中の銀紙もはがして、薄ピンク色のそれを指先でつまみ口に含んだ。
相手のあごをつかみこちらを向かせると、乱暴にその口に唇を重ねてきた。

(ん゛ん゛ーーーーっ!)
ロンはびっくりして反論しようと口をあけたら、ドラコの舌が入ってくる。
ゆっくりと舐めるようにざらりと、ロンの中で動く。
その動きにドクンとロンの心臓が跳ねた。

かぁーっとからだが熱くなってきて、いたたまれなくなる。
ひどく恥ずかしくなった。
必死でからだをよじって、相手から逃れようと暴れはじめる。
「もう、動くなって、本当にお前はムードもない―――」
ささやく声が耳にかかる。
ロンは首をすくめて、ぎゅっと目をつぶった。

そしてドラコから、丸いものが口移しで含まされる。
「―――なに?」
「きっと気に入るはずだ、ロニィ……」
耳に届く、熱を含んだような湿ったドラコの声。

押し戻そうとするロンの舌を許さずに、ドラコはその球状の物ごと深く唇をむさぼった。
ロンの口腔内で、甘い香りが広がっていく。
鼻に抜けるような、桃の香りを含んだ、果樹のにおい。
(………ああ……)
ロンの舌がそれに反応して蜜を滴らせるように、唾液がにじんで唇からあふれてくる。

ドラコは柔らかさを確かめるように、その舌先で唇を撫でた。
「どうだ、この味は?」
「―――んんっ、あまい……。甘すぎだ」
眉を寄せてひどく感じ入っているくせに、ロンは憎まれ口をたたく。

ドラコは苦笑して差し込んだ舌で、そのキャンディーをロンの奥の歯に寄せた。
「噛んでみろ。ロニー」
「え?……なに?」
ぼんやりと焦点が合っていない瞳で、相手を見つめる。

「奥歯のそれを噛んでみろよ。……さぁ噛んで」
促されてロンはゆっくりと桃色のキャンディを歯に当てた。
カリッという軽い音とともに、中のシロップがあふれ出す。

「ああっ……。冷たい―――」
中のシロップは氷のように冷たく、そして桃そのものを口に含んだように瑞々しかった。
ひんやりとしたそれは口の中で、甘く広がっていく。

その塊はふたりの熱によって、沁みこむように溶けて混ざり合った。
ドラコの手が相手の髪の毛をゆっくりとかき回す。
ロンは気が遠くなりそうな意識の中で、腕を伸ばして相手にすがりつき、胸を合わせた。

シロップで甘い唇。
甘いにおい。
匂いたつような甘い肌。
ドラコはその甘さに眩暈を感じつつ相手の舌を探して、もっと口付けを深くした。

逃げる甘いそれを追いかけて、ロンの頭を抱えて、唇を重ねる。
「………いや。くる―――しぃ」
小さな声が聞こえてきた。

(―――苦しいだって?なに言ってるんだ、こいつは?僕はいつだって苦しいさ。いつだって苦んでばかりだ。この赤毛のとことん鈍いコイツに振り回されて……)
少し憎らしくなって、軽くその舌先をかんでやった。
びくんとからだを震わせて、相手は抗議するような視線でにらんでくる。

ゆっくりと唇を離すと、ドラコは相手のほほに顔をよせた。
「キャンディでもケーキでも、お前が欲しがるものだったら、なんでも買ってやるよ。何だったら毎朝お前の枕元にスイーツが届くように、ふくろうを飛ばしてやってもいい。―――だから、思い出せよ」
「―――何を?」
「そんなものよりずっと甘いキスをする僕のことをさ」
「なにうぬぼれたこと言ってんだ。いい気になるなっ!」
ロンが照れて殴りだそうとするのを、笑って受け止める。

「じゃあ実力行使だ!お前とキスするときは、甘いものを食べさせてからするからな。毎回いつもそうして、キスと甘いものとの記憶をごちゃまぜにしてやる。だったらイヤでも思い出すさ。甘いものを食べたら、僕の顔を思い出して、キスを思い出して、たまらなくなる」
ふざけいるのか本気なのか分からない顔で、相手をからかう。

ロンはかぁーっと真っ赤になった。
「そんな変な刷り込みなんかするなっ、このバカ!」
殴りかかろうとしたら、逆に強く抱きしめられた。

怒って相手をにらむとまた、ポケットから新しいキャンディを出そうとしているドラコがいる。
それが彼らしからぬ、ひどく嬉しそうな表情だったので、少しだけ待ってやることにした。

あの包みを開いて自分の口に入れるまで、少しだけ逃げ出すのを待とうと、ロンは思ったのだった―――


                    ■END■
作品名:Sweet Food 作家名:sabure