二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Sweet Food

INDEX|3ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

バタバタと長い廊下を走った。

別に用事なんて何もなかったが、ゆっくりしたかった。
日曜の午後くらい、あのふたりに振り回されるのは勘弁してほしい。

逃げ出すように校舎の中を走る。
またあのふたりに見つかり拉致されたら、たまったもんじゃないからだ。

何度目かの角を曲がると、ロンは何かに蹴つまづいた。
「―――ああっ!」
突然のことで受身が取れずに前に倒れそうになる。すかさず誰かが倒れようとするロンのからだを支えてくれた。
その差し出された腕に助けられてロンは踏みとどまることが出来て、ほっとした顔になる。

「あっ……、ありがとう!」
お礼を言って顔を上ようとすると、いきなりその自分のからだごと壁に強く押し付けられた。

その弾みで今度は思い切り後頭部を固い石でできた壁にぶつけて、目の前が痛さでくらっときた。
ジンジンとしびれて、かなりの痛みだ。
これならば、まだ床にずっこけていたほうがよかったかもしれない。
(絶対、あしたには頭にでっかいコブができているよ!)
と思いつつ、ロンは顔をしかめた。

「―――甘ったるい匂いなんかさせやがって、まったく」
頭の上から降ってくるようなその声は、ひどく聞き覚えのある声だ。
ロンの顔が引きつる。
とても会いたくない相手だと、すぐに予想がついた。
このまま相手を突き飛ばして、ダッシュで逃げ出したくなったが、がっつりと相手に自分ローブの胸元をつかつかまれて逃げれない。
ロンは益々焦った顔になる。

「……おまえさぁー、いつもあいつとあんなことしてるのか?大広間でいったい何やってたんだ?恥ずかしげもなく」
低くて意地悪そうな声が耳元に届く。

カッとしてロンは顔を上げて、相手を鋭くにらみつけた。
「あんなことって何だよ?ただあそこでオヤツを食べていただけだろ?変な言いがかりをつけてくるな!」
ドラコは片方の眉を上げて、ひどく不機嫌そうにロンを見つめている。
「いつもあんなにいちゃいちゃと、食べさせあいこなんかしてるのか?あいつなんかと」
「―――はぁ?そんなことしてないだろ。何見てるんだ?いい加減、なんのことだか分かんないことを聞いてくるな!」

「あの傷者と抱き合っていたくせに」
ドラコは怒った顔のまま、ロンに顔を寄せて来ようとした。
「くそーっ!放せよ、テメーは!いったい何を考えているんだ!!」
ロンは離れようと腕を伸ばして相手のからだを突っぱねようとするが、まったく動かない。

「そう暴れるなって。おまえがそんな声を出すと、本当に誰かが来るぞ。ここは廊下なんだし、いいのか?」
『廊下、昼間、壁に押さえつけられている自分』
ロンはぎょっとした顔になり、自分がかなりピンチになっていることに気づく。

焦ってロンはこの憎たらしい相手に膝蹴りの一発でも食らわせて、本気で逃げなければと思った。
(虫の好かないマルフォイなら、少しぐらい怪我したところで良心が痛むこともない)
思い立った即実行とばかりにロンは足を上げて相手を蹴ろうとしたが、ドラコはひょいと体をずらしてそれから逃げる。
逆にニヤッと笑ってロンのからだを、一層強く壁に押し付けてきた。

壁と相手に挟まれてロンは足さえ動かせない。身動きのままならない状態になる。
非常にやばい展開だ。
冷や汗が滴り落ちた。

目の前にいるドラコは皮肉のよく似合う冷たい横顔で、ロンのことをじっとにらんでいる。
「甘いもの食べているお前の顔って、よかったよ。ものすごく、……―――かわいくて………。お前があれを食べると、ひどく甘く感じるな」
相手をからかうような表情でゆっくりと笑う。

「―――はぁ?何言っているのか、訳わかんねぇぞテメーは!そんなにドーナツが食いたかったのか?だから、大広間でずっとにらんでいたのか?そして廊下じゃ俺に足を出して転ばそうとしたのか?なんだそりゃ!」
ロンは相手に食ってかかる。
ドラコは苦笑した。

「おいおい、お前のその答えはかなりピントがずれているぞ」
「ああ分かったって!そんな回りくどいこと言わねーで、さっさとドーナツを下さいと言えばいいだろ!まぁ、お前に言われたって、そんなもの一個たりとも、めぐんでやらないけどな。残念でした!」
ベーッと舌を出す。

ドラコはその子どもっぽいロンの表情に、目を細めて笑った。
そっとやさしく相手のほほを撫でるとそれ以上は何も言わず、じっとロンの顔ばかりを見つめる。

何かを推し量っていめような瞳だ。
そのドラコの瞳はひどく不思議な色をしていて、銀色のような灰色ような、薄青くていつも掴みどころがない。

「―――おまえ、甘いものが好きなのか?」
ポツリとまたドラコは聞いてきた。

ロンは質問の意味が分からず、頭をかしげる。
「なんだよ、さっきから甘いもの、甘いものって?ああ好きだよ。おやつは甘いお菓子に決まっているだろ。そこで塩なんか舐めるやつなんかいるか?」
「―――だから、そうじゃなくて……」
ふぅーっとドラコは頭を振って、ため息をついた。

眉間にしわをよせて、「にぶい。あまりにも鈍すぎる」と小さく呟いている。
それがまたロンに勘に触った。

「くそーっ!鈍い、にぶいって言うなっ!みんな俺のことをそう呼びやがって。どいつもこいつも!ああ、ムカつくぞっ!!」
肩を怒らせて叫ぶ。
ロンはそのことをとても気にしていたので、なおさら怒りが湧き上がってきた。

「そうやってみんな俺のことをバカにしたらいいだろ!!バカで鈍い、ウィーズリーって!ああ、言えよっ!言って馬鹿にすればいいだろ。みんなも、―――お前も、大嫌いだ!ちくしょうっ!」
悔しさのあまりに、涙が出そうになる。

「ああ、もう……。おまえはなんで、いつもそういう態度ばかりを取るんだ、ロン」
ドラコは相手を慰めるような声を出した。

「ロンって呼ぶなっ!お前に馴れ馴れしく、そう呼ばれるだけでムカつんだよ」
ロンは相手に激しくかみつく。
ドラコは目を見開き一瞬別の表情を浮かべたが、それはすぐに胸の奥へと消え去った。

スッと目を細めるとドラコは眉を寄せ不機嫌に顔を近づけると、ゆっくりと叩きつけるように低く言い放った。
「お前は本当にバカだ、ウィーズリー!お前は勉強も出来ないし怒りっぽくて単純で短絡的で、バカ。どうしょうもないヤツだ。あるのはその、もやしみたいなヒョロヒョロの身長だけか?ひどいもんだな」
ドラコらしい容赦のない毒舌だ。
「くそーっ!本当にケンカを売るつもりかっ!!」
やるならやってやるという顔で食ってかかる。

その怒り狂っているロンの青い瞳を、じっとドラコは受け止めていた。

この目の前にいるドラコはいつも、みんなの前ではロンや自分の親友たちをバカにしてした。
辛らつで容赦ない言葉や態度で3人と敵対し、いつもいがみ合ってばかりいる。
だけど偶然ふたりきりになったときドラコは、決してロンを怒らす態度は取らなかった。
逆に勉強を教えたりして、結構ロンの面倒をみている。
ドラコは「お前はバカだから助けてやるんだ」とよくそう言って、からかっていた。

ロンはいくら相手からそんなに親切にされても、はっきり言ってドラコに激しくムカついている。
なぜならロンには分かっているからだ。
作品名:Sweet Food 作家名:sabure