気づいた時には・・・
二人は目の前の男が言ったことが、信じられなかったら。守る?
「わからないって顔しているね。それもそうか。ほかの奴らもここまでは、知らないだろう。いいよ。それが、菊のためになるならしてあげても。」
菊は、より一層震えていている。
アルは、険しい顔をしている。
「まず、話は第二次世界大戦まで飛ぼうか。君たちは付き合っていたにもかかわらず戦うことになり菊は体が続く限り戦い、君はそんな菊を見ていたくなくて世界一、最悪な選択をしてしまう。菊を傷つけたことを責め、それでも菊が求める限り自分が傍に居ようと考えるんだよね?そんなとき、僕と冷戦になって君の心はボロボロだったんじゃない?
それに気づいた君の兄は、菊に「君に近づくな!」とか言ったんだよ。
菊ったら、それは自分のせいだって悩んでたんだよ?だから、そんな可哀想な菊に取引を持ちかけたんだ。」
そこまで言って、貯めるように黙る。
「取引は簡単。冷戦をやめる代わりに、菊をもらう。菊はつらそうだったけど、君のためならっていて取引を飲んだんだよ。
そんなことを知らない君は、自分が邪魔だと思って身を引くという形で菊を守ってきたんだろう。兄弟愛以外の何物でもない愛を、さも最愛とばかりに・・・・・。」
「・・・・・・え。」
今度は、菊がびっくりする番だった。
「嘘でしょう?あなたが……あの人を愛して愛はずがないじゃないですか?」
ばつが悪そうにアルがその問いに答える。
「あの人のことは好きだよ。・・・・・・君には一生言うはずじゃなかったのに・・・・。
ロシアの言っていることは当たっているよ。あの人よりも君が大切なんだ。だから、守ろうとしたんだけど・・・・・・。」
その言葉に、菊は静かに涙を流していた。
「どうしたんだい?そんなに泣いて。」
なだめるように、頭をなでてくるアル。
・・・・・ああ、頑張ってきてよかったのかな?
その様子を見ていたロシアが面白くなさそうに背中を向けて歩き出す。
「ロシア!!」
後ろから走ってきた、アルが声をかける。
「君は何で、こんなことしたのさ。」
アルの問いに、くすりと笑い答える。
「そんなの菊の笑顔が見たいのと、あの子が大切だからに決まってるじゃないか。まあ、僕だけじゃないと思うけど。」
そう言いながら、あの会議に集まっていたメンバーを思い出す。
「そんなことより、君はいいの?」
「なにがだい?」
「だってそうだろう?君は、菊をとった。その事実は変わらないよ?そうするとあの人はどうなるんだろうね?」
「どうなるもないだろう?きくには言わなかったみたいだけど、俺らの中をさいたのはあの人だし・・・・・どうせ、あの人が好きなのはフランシスだろ。
俺とだって、フランシスを振り向かせるためだろう。」
「君は本当にそう思っているの?」
「どういうことだ?」
「いいよ、わからないのなら。・・・まあ、どうせ誰かを傷つけるには違いないんだが。とにかくもう菊を悲しませないでよ。」
「ああ、がんばるよ。」
「アルさん・・・・・。苦しいです。」
「・・・・・・・・・・。」
もう、離さないから。そんなことを心に誓うのであった。
「ロシア、こんなところでどうしたんだい。」
「ん?ああ、ちょっと失恋記念に飲みに来たんだ。」
「へー。君が失恋ね?」
「一つ、君に聞いていい?」
「お兄さんが答えられることならね。」
「君の、大切な人は誰?」
「大切って、恋愛的な意味で?」
「まあ、そんなとこ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。菊かな」
「そうなんだ。あとこれは忠告。近いうちに君に災難が二つ降りかかるよ。」
「?」
「わかんなくていいよ。」
「菊、改めて言わせて。・・・・・君のことが好きだよ。」
「私もです。叶わないと思っていたのでうれしいです。」
そっと口を重ねる。
「どんなことがあっても離れないから。」
・・・・・昔の私へ。私はとても幸せです。
作品名:気づいた時には・・・ 作家名:刹那 甘露