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璃琉@堕ちている途中
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ノンストップ、バッド

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いつからか折原は左腕に時計をするようになった。
『あの』折原が、だ。
肌身離さず、それこそシャワーを浴びる時間以外の全てのシーンにおいて、彼は腕時計を巻いている。二本の針が延々と、文字盤の上を規則正しく踊り続けるタイプの代物だった。
デジタルであったなら、まだ救いだったろうと思う。

折原は腕時計を離さない。縋っているようにも見える。
私に縋れば良いじゃない。
一度、情事の後の気怠い空気に紛れて嘯いたことがある。
私が誠二に縋るように、貴方も私に縋れば良い。
縋っちゃいなさいよ。
すると、折原は嗤ったのだ。嗤いつつ、腕時計を巻いた手首を握ったのだ。
君は、優しいけど怖いね。
いや、怖いくらい優しいのか。
その嗤いが嫌いな私の眼差しは、彼の表情(かお)ではなく、腕時計に注がれていた。折原の掌の下の、文字盤に。
怖いから優しいのか。
『それ』から隠すように私の唇を奪う折原に、遠ざけるように私を抱く彼に、私は心の中で尋ねた。
優しいから怖いの?
優しいのは、怖いの?

折原、それ、いつから止まっているの?

折原は、止まったままの腕時計を離さない。
私は、止まったままの折原を離さない。
止まったままの私を折原が離さないように、私は折原を離さない。
止まったままの私を折原が離さないでいられるように、私は折原を離さない。
止まったままの私を折原が離さないでいてくれるように、私は折原を離さない。

縋っているのは、私の方なのだった。