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Hitze2〔銀新〕

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胸が熱くなる。これか、恋だとか愛だとか難しいことはわからない。かといって芽生えた気持ちを、大人の態度のようになかったことにも出来ない。いや、そんなこと最初からどうでもいい。
そう、今この電話の先に居るのが、大事な人だと確信を持って思える事実。
「僕、万事屋に帰ってもいいですか?」
「バカ、迎えにいく」
がちゃりと電話は切れた。
そう、それが全てだ。
「新ちゃん、行くの?」
感情の読み取りにくい表情で妙は言った。だから新八も、余計な言葉は挟まずに頷いただけだった。
信じられない速さで、外からスクーターのエンジンの音がした。新八は着替えを済ませ、玄関で一度振り返る。
「姉上、ここも僕の家ですから」
「わかってるわよ」
そう返事をしたが、それを聞いたとき妙は何だか苦笑するしかなかった。まるで、すでに小姑みたいな心配を自分がしているということだ。
がらりと扉は開かれ、新八はすぐに白いヘルメットを乱暴に被せられた。
「後ろ乗ってろ」
そう言われて、その言葉に先に行ってろが含まれているのがわかり新八は先にその場を離れた。
「二度はありませんよ。悲しませないで」
そのくらいのお小言は許されるはずだ。妙はそう思い、強い口調で言ってやった。すると銀時は酷く真面目な顔でこちらを見返して、らしくない声音でこう言った。
「あいつが大事なんだよ。…多分それはあんたと同じような大事であってそうでない」
言いながら、酷くそれが曖昧で難しく、不確定で不安定なものであるかをよくわかりきっていた。
だが妙はその言葉を聞いて、すぐさまこう言った。
「あの子が幸せならそれでいいのよ」
銀時は少し驚いたような顔をして、そして酷くぎこちない笑顔を浮かべた。
「さすが、言うことが違う」
「ありがとう」
「俺には、その幸せは与えられないな」
「…そうかもしれないわね」
そのことに自覚的であるからには、そうだろう。本当のことを言えば、妙にだって新八の幸せが何であるかなどわからない。それは新八が決めることで、だからこそ幸せなのだ。

スクーターに向かうと、新八がいつものように後ろに座っていた。銀時も乗り、エンジンを噴かせると回された腕に銀時は胸が潰れそうにその感触を欲しがった。
「銀さん、ごめんね」
スクーターは走り出し、音がいっそう大きくなった。
「僕、銀さんが好き」

 

ああ、だからやっぱり俺は。
作品名:Hitze2〔銀新〕 作家名:マキナ