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X'mas!(キョンハル)

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「それはどうも。なに、簡単なことです。凉宮さんは、クリスマスイブの日にあなたと二人になりたいと願った。それが、何かをするため―たとえば一緒になにかをしたい、なにかを伝えたい、渡したい―というようなものなのか、どういう意図があったのかはわかりませんが、とにかくそう願ったとしたら。僕たち三人の個人的な用事を創造してしまうことなんて、彼女にとっては造作もないことなんですよ」

そんなこと知るか。ハルヒの考えることなんざ一生わからん。
ただひとつ。先程プレゼント交換中に気づいたのは、『男女兼用のものがいいわね』と言っていたわりに、俺がもらった手袋は明らかに男物だったし、昨日一緒に行ったあのアンティーク調の店には手袋なんて置いてなかったってことだ。ついでにいうなら、朝比奈さんの受け取ったあの写真たてはあそこの店のもの。……これがどういうことか、なんて野暮なことは放っておこう。

「なにか思い当たる節でも?」

いいや、なにもないさ。そのにやにやを止めろ。

「おや、すみません。ですがこれはもう癖ですので。本当はこんなキャラさっさと捨ててしまいたいんですがねぇ……」

こちらとしてもそれを願うばかりだよ。

「そういえば凉宮さん、今日は機嫌がいいようでしたから、きっと昨日二人きりで出掛けたことは間違いではなかったみたいですね。これでしばらくはまた、僕のアルバイトも暇になりそうです」

それだけ言うと、ではまた、と要らぬあの爽やかな嘘くさい笑みを残して古泉は去っていった。くそ、返せ、俺のマフラー。



ハルヒが何を考えてるかなんて、そうさ、俺にわかるわけがないが。
きっとあのときの笑顔だけは、じいさんになっても忘れないだろうと思う。


空から落ちてきた雪に、ハルヒのはしゃぐ声が聞こえた気がした。






end.




作品名:X'mas!(キョンハル) 作家名:永華