赤いマントと青い鳥
Prologue
不幸な人生だった、と振り返るには幼過ぎるけれど、人生の大半の苦しみと喜びを共有してくれるはずだった家族を亡くしたその日から、幸せな人生なんて望むことは出来なかった。不幸でも、恵まれなくても良いから、自分に残ったほんの一握りの大切なものを、せめて守れるように。それだけを祈って、強くなりたいと願った。
幸せを探し回る童話の主人公ほどは逞しくなれないけれど、両手で囲えるくらいの世界の中、大切な人が笑っていて、大切なものが傍にある、そんな幸福をつくるのだ、と誓った。それはどんな虚勢よりも本当だった。