赤いマントと青い鳥
世の中は理不尽だと決め付けていた
体育館裏には、先ほどの生徒のほかに三人いた。
「あ、来たぜ」
一斉に視線を向けられて怯み掛けたが、気丈を装って平然と振舞う。表情を悟られないようにするのは、本来ひどく苦手なのだ。顔に出やすいだなんて間抜けな話だが。
「サッカー上手いってどのくらいか、見せてみろよ」
声を掛けてきたのは、教室で自分を呼びつけてきた眼帯の生徒だった。それはそうと、卑怯なのではないだろうか。決闘は一対一がセオリーなはずだ。一体四では、流石に分が悪い、と思う。それに気のせいではなく、相手の柄が悪い。小学生でオールバック、マスクに眼帯。もう一人は凶悪な雰囲気がない代わりに、小学生とは思えないほど図体がでかい。
「どうやって」
「そりゃ、やっぱ」
そう言って蹴って寄越したサッカーボールを、膝で止めて蹴り返す。零れるように簡単の声を漏らして、少しだけ笑った、その顔は、思いの外優して。
「おい何やってんだ、早くあと三人探して来いよ。一人じゃそっちのゴール誰が守んだ」
「は?」
「四対四でやんだよ。そっち三人、足りねえだろ」
言葉を失うというのは、こういうことを言うのだろう。絶句したままでいると、眼帯の生徒はウォームアップなのかリフティングを始め、あとの三人も重そうに腰を上げた。彼は何と言ったのだろうか。さんにんみつけてこい。友達もいないのに。それどころか、この三週間、ほとんど誰とも、何も、会話もしていない。
これがイジメというやつなのか。
「はーやーくーしーろ」
急かす声に弾かれるようにして、その場を飛び出した。
これが所謂、せんれい、というやつなのだろう。