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【腐向け】西ロマ+米SS・5本セット

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7月のグレープフルーツ


 家の扉を開けると、配達員がダンボールを持って立っていた。送り主は『アメリカ』。
 何でアイツがと思いながら重たい箱を受け取りキッチンで開けると、箱の中にはカリフォルニア産のグレープフルーツが詰まっていた。柑橘類特有の爽やかな香りを楽しみつつ、以前したアメリカとの会話を思い出す。

「君の所は柑橘類の産地だけど、グレープフルーツに興味は無いのかい?」
 世界会議場のトイレで、隣りで手を洗うアメリカに急に話しかけられた。一体何の話の続きなのかと突っ込みたいが、言うだけ無駄だろうから飲み込む。
「うちで作るのは微妙だな。食べるだけならキューバが時々くれるので十分」
 そう答えれば、アメリカの眉間に皺が出来る。
「グレープフルーツならアメリカだよ! カリフォルニアもフロリダも有名だろう?」
 ……買えって事か。いきなりの売り込みに引きながらも、そういえばグレープフルーツは貰ってばかりで買った事が無い事に気付いた。
「アメリカのは食べた事ねぇな」
 そっと体を引きながらも、一応大国様にフォローしておく。
 自国のオレンジやレモンが好きでグレープフルーツを買う気が湧かない事。食べたくなったらキューバがくれるので十分だという事。別にアメリカ産が嫌いなのでは無く、食べた事が無いだけだという事を話せば、アメリカは渋々納得してくれた。
 どうして自分がここまでフォローしなきゃいけないのかと疲労を感じていると、何か考えついたような笑顔で「じゃあ、食べてみるといいよ!」と言って去って行ってしまう。
「……なんだ、あれ」
 暴風のようなアメリカに思わずそう零した。大国の圧力をこんな所で、そんな理由で出すのは止めて欲しい。
 大きく息を吐き、壁にもたれ掛かる。
(イギリス様すげぇな……)
 あのアメリカと会話し続けられる体力と精神力に、思わず尊敬してしまう。変に圧力を感じる分、同じ話の通じなさでもスペインよりタチが悪い。
(……今日はスペインに優しくしよう)
 そうロマーノはこっそり思うと、トイレを後にした。

(食べてみればいいよって、わざわざ送って来たのか)
 そんなちょっとした会話で送ってくるなんて、意外と律儀なのだろうか。 ……自己顕示欲が強いだけのような気もするが。
 箱の中身を一つ手に取る。鼻に近づければ、少し苦みのある爽やかな香りがした。
 カリフォルニア産は市場に出回り初めて暫くたち、7月の今は丁度旬に入る。わざわざ考えて送ってくれたであろう心遣いに、KYKY言われているアメリカの意外に真面目な部分を垣間見る。
 少しだけアメリカを見直しながら、ロマーノは早速グレープフルーツを剥いた。
「……うん、旨い」
 ジューシーな甘みの中に苦みがあり、すっきりとした味わいに爽やかな酸味が広がる。甘いだけの物はあまり好きではないロマーノに、甘みが少し押さえられたカリフォルニア産は合うようだ。
 残りはどんなドルチェにしようか口を動かしながら考えていると、いつの間にか勝手に家に上がり込んでいたスペインがキッチンに入って来た。
「ろっまあの〜!」
「おいこら、不法侵入者」
 手はグレープフルーツを持っているので、取りあえず足で蹴る。「痛いわ〜」と言いながら、スペインはテーブルの上のダンボールを珍しげに覗き込んだ。
「キューバ?」
 まあ、グレープフルーツが入っていればそう思うだろう。ロマーノが返事するより先に箱の送り主を確認したスペインは、深い眉間の皺を隠す気もせずに詰め寄った。
「ちょお、何これ。ロマはアメリカと仲いいん?」
 黒いオーラ全開で言われても困る。あいつと仲良くなった覚えはまるっきり無いのだ。
 とりあえず、手にしていたグレープフルーツの房をスペインに向ける。
「あ……あーん……」
 我ながら酷い棒読みだったが、スペインはあっさり食い付いた。甘い行為の恥ずかしさに顔を赤らめながら、ロマーノはスペインの口がふさがっている隙に事情を説明をする。
「ふーん……」
 それでも気に食わないという顔で、スペインは口の中の果実を飲み干した。
「これ、ちょお苦くない?」
 何がなんでもアメリカにケチをつけたいのか、そんな感想を言う。美味しいのにと眉をひそめたロマーノは、意地の悪い笑顔を見せた。
「甘いだけなんて旨くねぇだろ。果実でも、……男でも」
 甘いだけの男よりも、どこか少しスパイスのある男の方が女性は惹かれるもの。自分にはめっぽう甘いスペインにロマーノはそう笑うと、手に残っていたグレープフルーツの房を彼の口にねじ込んだ。
「……」
 含んだ意味は伝わったのだろう。口を動かしながら、何とも言えない顔をしている。その顔に満足し、もう一つ食べようと箱を見た隙に腕を取られた。
 強く引き寄せられ口づけを受け入れる。合わさる口の中に広がる果実の苦みに、ロマーノはうっすら微笑んだ。
(甘いだけじゃ嫌だ)
 スペインの肩に腕を回し、積極的にキスを繰り返す。
(わがままを全て受け入れて甘やかす……。俺を子供みたいに扱うのは止めてくれ)
 口づけの合間に見えたスペインの瞳に、今までと違う色が見える。
 その色に満足したロマーノは、そっと瞳を閉じて彼の手を受け入れた。