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【腐向け】西ロマ+米SS・5本セット

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かごいっぱいのネーブル


「届いた」
「あれだけでいいのかい?」
「これでも多い方だ、コノヤロー」
 以前アメリカからグレープフルーツを貰った礼にこちらからブラッドオレンジを贈って以来、ロマーノとアメリカは年に数回送り送られの関係を続けていた。
 名物のお裾分けのようで実際は、それを口実にお互いの過保護な保護者への愚痴を聞いてもらう合図のようなもの。今回も送られた籠一杯のネーブルオレンジの礼に電話をした所を、しっかりと捕まった。
「聞いてくれよ、ロマーノ! イギリスがさぁ……」
「……面倒臭ぇな、イギリスは」
「だろ?!」
 この時のアメリカは適当に相槌をうっていれば三時間程で満足してくれるので、貰ったオレンジの皮を剥いてジューサーに放り込みながら、ロマーノは適度に相手をする。愚痴を聞いて貰うのはこちらもやっている事なので、大人しく話の聞き役をこなしていった。
「昔なんか酷かったよ。いきなり仲良かった近所の子が引っ越してたりさ」
「ああ、あるある。うちもスペインが同じような事、何かしてたな」
「やっぱり! でさ、」
 時折ヒートアップしたアメリカを諌めたり同意したりして時間は過ぎ、ようやくアメリカが落ち着いた所で愚痴大会は終了となった。時計を見れば二時間半。今回は結構早く終わったと剥き終えたオレンジをひと房口に放り込み、その味を堪能する。
「あ、オレンジ旨い」
「だろ? カルフォルニア産さ! そうそう、ロマーノ。今度はレモンをくれないか?」
「いいぜ。リモンチェッロも飲むか?」
「ありがとう!」

 愚痴を吐き終え清々しい声で電話を切るアメリカとの通話を終え、ロマーノはジューサーのスイッチを入れた。少なめに頼んだ筈のオレンジは大き目の籠一杯に届き、一気に消費する為にオレンジジュースに加工する。出来あがった美しいオレンジの液体を容器に移し入れ、冷蔵庫で冷やした。
 何だか変な距離感だ。そう、ロマーノは冷蔵庫の前で思う。
 対面だと大国の圧力を感じて話し難いのに、電話だと普通にアメリカと話せる。子供時代の過保護な保護者のあるあるネタで意気投合してからは、頻繁とは行かないが電話やメールのやりとりをするようになった。
 先程まで使っていた携帯電話を、なんとなく開く。メールや通話の履歴にある弟とスペイン以外の人物は、日本とアメリカ。その中でも群を抜いて増えてきた大国の名前に、口元を緩めた。
 始まりは何だったのかと思い出す。確か、送りつけられたグレープフルーツへの礼を一応しようかと電話した先で、アメリカが盛大にイギリスの愚痴を言いだしたのだ。面倒だから弟のカナダにでも言えよと電話を切ろうとすれば、カナダはイギリス贔屓なんだよ! と力説される。
 どうやら同意してくれる仲間が欲しいらしく、同じような目線・立場の自分が目をつけられたようだ。KYなアメリカを諌めながらスペイン相手のスルースキルを駆使し、甘え癖は弟に対するようにあしらう。延々と続く愚痴を聞き流していたら、うっかり気に入られてしまった。
 世界会議場で堂々とメールアドレスの交換をしようと言いだした時は本当に驚いたが断れる訳もなく、結果今までだらだらと関係が続いている。何度か愚痴を聞いているうちに聞き役が馬鹿馬鹿しくなってきたので、こちらもスペインの愚痴を言えば同意されて盛り上がり、適度な距離のある友人のような関係を築いていた。
 男に興味は無いのだが、アメリカとの距離のある関係は気楽で許容出来る。スペインとフランス達とのような羨ましい関係が自分にも出来たようで、面倒だ何だと言いながらも実は少しだけ喜んでいた。大陸が違う故かしがらみ無く話せる相手は貴重で、意外と博識なアメリカの話は興味深いものもあり、世界が広がったかのような感覚をロマーノにもたらす。
 手のなかの携帯を操作し、先程の通話履歴を眺める。相手の名前を見ながら話の内容を思い出し笑いしていると、背後から急に声がした。

「……またアメリカかい」
「ヴォア!? ……スペイン!」
 思わず手にしていた携帯を閉じる。別に浮気している訳ではないのだから隠す必要は無いのだが、スペインのアメリカ嫌いは本物で、今までも勝手にロマーノの携帯の履歴をチェックしては文句を言っている。
(自分だって、フランス達と連絡取りまくっている癖に)
 自分を棚にあげたまま、こちらに文句を言えるのか。嫉妬しているのはこっちも同じなのだと言いたいが、そんな事を言った所でスペインを喜ばすだけなので黙っておく。くやしいので、とりあえず驚かされた仕返しに足を蹴っておいた。
「今回はネーブル、ね。オレンジなら、うちのバレンシアオレンジをやんのに……」
 勝手に送られたもので別にオレンジが欲しかった訳ではないのだが、アメリカに対抗心を燃やしているらしき元親分様には伝わらない。籠に残ったネーブルオレンジを手の中で遊びつつ、ロマーノに恨みがましい視線を送る。
「俺かて、ロマーノにおねだりされたいわ」
「ねだってねーよ、このカッツオ」
「やっぱり、若くて金持ちの男がいいって言うんか?!」
「誤解を招くような言い方すんじゃねーよ!!」
 顔を青ざめながら言う事なのかと頭突きで黙らせ、どう話しても浮気の疑いを消さないスペインに溜息をつく。執着されるのは別にまあ、うん、そんなに嫌じゃないというか、嬉しいというか色々思うのだが、いかんせん一応恋人な男が信じてくれないのは辛い。
「ロマー、親分にも『オレンジが欲しい』っておねだりしてぇや〜」
「あのな……」
 あくまでもアメリカと張り合いたいらしいスペインに抱きしめられながら、ロマーノはどうしようかと頭を痛める。暫く必死な顔をしていた嫉妬深い恋人の顔をじと目で見つめていたが、張り合う事無くスペインの方が重要だという事を告げる為にゆっくりと口を開いた。

「……オレンジよりも、お前が欲しい」