いのりのかたち
一番美しい瞬間に時間を止められた薔薇を見つめて、その花束を腕に抱えて私は母を振り返る。
「今度の大学の休みに、中央へ行こうと思うの」
・・・ずっと気になっていた事がある。
あの人は、何を思って花を捧げてくれるのだろうか。
私の事を思って、花を選んでくれるのだろうか。
それを、ずっと聞いてみたかった、から。
そうすれば、母はそれは素敵ね、とゆっくりと目を細めて微笑んでくれた。
「お忙しいでしょうから、邪魔をしちゃダメよ」
「うん。――――あと、パパの所にも行くけど、」
何か、あるかな?
「そうね・・・」
小首を傾げて考え事に浸る母は、まるで少女のようで、自分の母ながら可愛いと思う。しばらくうーんと考えた後に、ぽん、と彼女は両手を打った。
「この間ね、学生時代の友達に手紙を貰ったの。パパたちの学んだ士官学校の近くに今も住んでいる子なんだけど」
「うん…?」
「花が咲いたんですって」
「――――花…?」
そうよ、と母は笑って頷いた。
「学生時代に『さくらんぼからちゃんと木になるのか』って言い合いになって、一緒に種を埋めたんだって言ってたわ」
ちゃんと実がなったら、パパの勝ちね。
「・・・だから、あの人たちに伝えてきて頂戴」
あなたたちが護った木の下には、子供たちの笑顔が溢れていると。