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逃避行しましょうか【メフィ燐】

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メフィストの言葉にぴくっと燐の肩が揺れた。そして、

「ぁ・・・めふぃ・・・す・・・と・・・?」

燐の瞳にだんだんと光がともり、瑠璃色の玉に自分の姿が映ったことにメフィストは心の中で微笑した。

「漸くお目覚めですか、プリンセス?」

ウィンクをして見せれば、顔を赤く染めた燐がぎゃぁぎゃぁと騒ぎ出す。

「だ、誰がプリンセスだ!馬鹿野郎!!」

このやりとりは幾つぶりか。懐かしいと言えるほど昔でもないはずなのに。
なぜか泣きたい衝動に駆られつつ、メフィストは頭をふった。

「てっきり、眠り姫なのかと思いまして。私のキッスで起こして差し上げようかと」

「いらねぇぇ・・・って、え、お前・・・なんでそんなに血だらけなんだ!?」

燐に胸元をつかまれ、少しばかり息が苦しい。

「気にしないで下さい。すぐに直りますよ」

「すぐってお前・・・・ぁ、」

燐の視線が、メフィストから自分の手、身体に移っていく。
その青い瞳が驚愕と恐れに揺れ動いたのが、メフィストにも分かった。

「俺が、おまえをっ」

「燐!」

震え出す燐の身体をメフィストはまた抱きしめた。

「アレはお前ではありませんよ。だから気にすることはない」

「でもっ」

「私は悪魔ですよ?ほら、もう傷が治ってきている」

嗚咽を零し始める燐にメフィストは苦笑を漏らした。埃でごわごわになっている燐の頭を何度も撫でやる。

「全く。男の子なのだろう?泣くなこれくらいで」

「うぅっ」

メフィストは燐が落ち着きを取り戻すまで、頭や背中を撫でた。
だんだんと燐の嗚咽が聞こえなくなり、鼻をすする音が牢に響くだけになる。

「燐。よく聞きなさい」

「ん?」

メフィストは燐を抱きしめたまま、バチカンから言われたことを今の燐にわかりやすく端的に話してやった。
燐の身体がまた震え出す。それが怒りでは無いことは分かっていた。

「っ!なんでっどうしてっ」

止まっていたはずの燐の瞳からまたぼろぼろ涙がこぼれ落ちる。
燐はメフィストの服をぎゅっとつかみ、その胸に額をこすりつけて声を押し殺しながら泣いた。
メフィストはその間、ずっと燐のしたいようにさせた。
今は何を言っても無駄だから。

(これは、燐の心が整理する事ですから・・・)

けれど、メフィストはずっと燐の頭を撫でていた。

「・・・メフィスト」

「はい」

先ほどまで泣いていたはずの燐の声。胸に顔を押し当てたままだから余計にくぐもって聞こえたが、
メフィストにとって聞き取りにくいわけではない。

「お前が、俺を殺すのか」

「・・・いいえ」

「お前は、俺が逃げないようにするのを止めに来たのか」

ぎゅっと、先ほどよりも強く燐はメフィストの服を掴んだ。
メフィストから見えるのは、燐の後頭部だけ。
それでも彼が歯を食いしばって、メフィストの告げられる言葉に耐えようとしているが手に取るように分かる。
否定か肯定か。怖いだろうに、恐怖に立ち向かう姿にメフィストはそっと目を伏せた。

「いいえ」

次の瞬間、燐が思い切り顔を上げまじまじとメフィストを見上げてきた。
メフィストはそんな燐に笑いかけてやる。

「私は君を静かにさせろ、と言われただけで君を止めろ、とは言われていませんよ」

「・・・それって屁理屈じゃ・・・」

途端に眉を八の字にする燐にメフィストは笑い声を上げた。

「ははは!いいんですよ!こちらの世界ではそれが重要なのです!さぁて、と。燐も正気に戻ったことですし?」

「ですし?」

小首をかしげ、見上げてくる燐に優越感を覚えつつメフィストは口角を上げた。

「ゲヘナでへも行きますか!」

「はぁ!?」

「おや?アッシャーには最早君の居場所はない。隠れてひっそりと暮らすよりも、
 ゲヘナにでも行って悠々自適に暮らす方が良いでしょう」

「で、でもよっ」

「あぁ、魔神ですか?だいじょーぶですよ。その辺は私が何とかして差し上げましょう」

「え、え」

困惑する燐はメフィストから手を離した。メフィストはその場で立ち上がり、燐を見下ろす。
そして優雅に、燐の前に手を差し出した。

「ふふ。決めるのは燐、君だ。選択しなさい」

燐は差し出された手と、メフィストの顔を交互に見つめ、そして・・・。

「お前はずっと側にいてくれるんだろ」

燐は差し出された手に、自分の手を重ねた。金色の指輪が2人の視界に入る。

「いいですよ。だから、私を厭きさせないで下さいね?」

メフィストはその手を掴むと、まだ自力で立ち上がることが出来ない燐を引っ張り上げた。
そしてもう片方の手で腰を抱き、立たせてやる。

「えー」

「はは!では、ちょっと学園に戻って愛の逃避行の準備でもしましょうかね」

「あ、愛の逃避行・・・」

「愛でしょ?」

「・・・なんだかなぁ、そのフレーズ嫌だ」

「我儘言わない」

メフィストはがっくりと肩を落としている燐に笑いかけると、
いつも唱える数字を紡ぎながらそっと燐の唇へとキスをした。