Grateful Days
こんな時でもそれを忘れないあたりは大物なのかのんきなのか。にわかには決め難い、と思いながら、理一は堂々と不法侵入してきた階段を逆戻りしていく。背負った健二はあまり重くはなく、けれど確かに温かかった。その熱は、理一に不意に昔のことを思い出させた。その時背負っていたのは、今連絡がつかない相手だ。それはもう本当に、ずっと昔のこと。
理一の車が佐久間と健二を収容して走り出した、その大体五分後。とりたてて不審ではないものの、学校に用があるというのでもなさそうな車が久遠寺高校の校門沿いに駐車した。
中から降りてきたのはどう見ても高校生ではなく、そして日本人にも見えなかった。
彼らは理一が侵入したよりもさらに隠密行動にのっとり、高校の敷地へ侵入、確信をもった様子で物理部の部室へと潜入した。
――しかし、そこは既にもぬけの殻。
彼らの正体がどうであれ、とにかく理一は間一髪間に合ったということのようだった。
作品名:Grateful Days 作家名:スサ