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Grateful Days

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Ending



 早朝の東京駅。
 財布と携帯だけを持った軽装で、少年は身軽に始発の新幹線から駆け降りた。
 一路目指すは、隠れ家である。隠れ家と言う響きからは程遠い、瀟洒でセレブリティあふれる部屋だが。
「まったく。…最初から僕もこっちに来てればよかったんだ」


 早朝の成田空港。
 こちらもまた、財布と携帯と小型無線だけを持った軽装の男が、飛行機が到着するのを待っていた。まさかまっとうな手段で返してくれるとは思わなかった、と思いながら。だがしかし、軍基地などに引き取りに行くよりはるかにいい。ここからの移動が疲れるとは思ったが、…車という密室は絞り上げるのにはちょうどいいだろう。
「あれかな」
 到着案内を聞きながら、理一は立ち上がった。手のかかる叔父だ。きちんと迎えにいってやらないと、またどこで迷子になってくれるかわかったものではない。

 早朝のとあるマンションの一室。
 結局床で雑魚寝してしまった高校生二人は、未だ雑魚寝の途中。その周辺には食べ散らかしたと思しきパンの袋やジュースが転がっていて、ある意味ほほえましいが、部屋の様子とは非常にミスマッチだ。彼らがある意味、その夜の話にかかわった中では一番平和な朝を迎えていることになるが、だがそれがいつまで続くものかはわからない。

 ――そして、朝も昼もかけ離れた空間で。
 アバターはきょろきょろと世界を見まわしている。ほんのいっとき、マスターと強く結びついた記憶がまだどこかに残っている。
「………」
 しっくりなじんでいたのは、自分が彼のアバターだからだ。なりゆきで作られた「自分」をアバターは事実として理解していて、だがアバターにはそれをどうこう思う感情なんてない。…ない、ということになっている。もし何かを思うとしても、それはプログラムのはずで。
 だが、今、小さな両手を見て、この体に同調していた少年のことを思うとあたたかいという気持ちがわかるような気がした。ロジックではないそれが。
「ふふっ」
 たぬきのような、リスのようなそれは恥ずかしそうに笑い、顔を押さえる。OZは今日も夢見るように白く、美しい。

「おはよう」

 違う場所でそれぞれに発せられた挨拶が、今日も世界を回していく。
作品名:Grateful Days 作家名:スサ