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Grateful Days

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 健二は瞬きした後二人をみくらべて、そうだね、と笑う。
「いやおまえ寝てたし!」
『そうだよ、健二さんは寝てた』
「えっ、ええ〜…僕だって何か…がんばって、…あ」
「『あ』? なんだよ、まだ何かあるのか」
 眼鏡を直しながら身を起した佐久間に、健二は首を振る。
「アバターと同化しちゃってた時の記憶は残らないと思ってたんだ。侘助さんもたぶんそうだと思うって言ってたし…、でも、消えてないなと思って」
『…侘助おじさん、か』
 佳主馬の声にどことなく不審なものを感じて、健二と佐久間は顔を見合わせた。
『…家族会議だ。絶対』
「わぁ…」
 健二は言葉を失った。あの親族御一同に締め上げられるのか。特にあの手ごわい女性陣に。…気の毒に。
「…ゴーストを逃がしたのは侘助さんじゃないみたいだし…大目にみてあげてね、一緒に協力してくれたし…」
『それは当たり前。だって侘助おじさんが作ったんでしょ。健二さんは人がよすぎだよ』
 シビアに告げる佳主馬は、誰よりも大人に見えた。だが、でもね、と食い下がる健二のしぶとさは一部で定評がある。
「でも…、侘助さんだって被害を受けたわけだし」
『もう、どうしてそう…、わかった、わかったってば。誰にも言いません。特におばさんたちには』
 結局佳主馬が根負けした。すげえな健二、キングに勝ってる、と佐久間は内心口笛を吹いた。まぜかえすこともないので黙ってはいたが。
「うん。ありがと」
『なんで、ありがと、とか…、もう! …おやすみ! その部屋、勝手に使って、多分ベッドとかあると思うし。そっちでファイトに参加しなきゃならない時用にって用意してもらってるんだけど、ほとんど使ったことないからわからないけど』
「うわあ…佳主馬くんて、セレブなんだね…」
『そんなんじゃないし』
 いつもの佳主馬のようでいて、ちょっとだけ照れてもいるようだ。健二といると中学生らしいところもあるよな、と佐久間は友人を誇らしく思った。
『とにかく。…おつかれさまっ』
 理一おじさんが戻ったら伝えといて、と言って、キングはログアウトした。中学生的に、結構な夜更かしのはずだ。たとえ金曜の夜といっても。
 佳主馬との通信が切れてしまうと、広い部屋はいやに静かになった。佐久間は床に寝そべり、健二は椅子に身を起した。
「佐久間」
「んー?」
 億劫そうに見上げてきた親友に、健二は笑いかける。屈託のない顔で。
「サンキュ。助かった」
「ん。礼はマックでいいぞ」
 悪戯っぽく言ってくれた頼りになる友達に、健二は「了解」と返した。
作品名:Grateful Days 作家名:スサ