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木漏れ日

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そして放課後。
その木の下にハリーはいた。
約束はしていないけれど、ハリーは僕が来ることを分かっていたみたいだ。
―――で、さっきからずっと僕から不自然に顔をそらせたまま、謝り続けている。

僕はずっとそんなハリーの仕草がおかして仕方がなかった。
「なぁ、ハリー?」
呼びかけるといつもは勢い込んで必要以上にこちらやってくるのに、今日はそっぽを向いたまま、「なに?」と返事をする。
絶対にこちらを見ようとはしない。
きっと彼は緊張しているのだ。
この髪型の僕を見て、昔のいがみ合っていた頃のことを思い出しているに違いない。

(……まったく)と思う。

(……まったく、僕の恋人はなんて手がかかる相手なんだ……)
精神的にも鍛えられているから心がひどく強いのかと思えば、変なところが打たれ弱い性格だ。
(特に僕の言葉や態度には、いつも過剰に反応して、まったく……)
僕は目を細めて笑う。

笑いながら、ハリーの手を握った。

「えっ!ええっと……、いったいどうしたの、ドラコ?」
ハリーはいきなり僕が自分の手を握ってきたことが信じられず、飛び上がるほど驚いている。
いつもはあんなにも自分のほうから有無を言わせず、僕に触ってくるのに。
その大きくて平べったい手の甲にキスをした。
ハリーは思ってもいなかった僕の行動に慌てふためいている。

僕はじっと相手を見つめた。
癖のある髪の毛も、緑の瞳も、その傷もみんな好きだった。
僕は一生言わないだろうと思っていた言葉を、思い切って言うことにした。
それは緊張もなく、気負いもなく、ものすごく自然に僕の口からこぼれ出た。

「―――ハリー……、もういいからな……。……もう謝らなくてもいいから。……もう泣かなくていいからな。不安にならなくてもいいし、いくらドジしてもいいから。もっともっとワガママを言ってもいいからな。―――だって僕は君のことをとても愛しているから………」
その僕の告白を聞いた途端ハリーは口を押さえて目をつむり、また泣き出してしまった。
激しくからだを震わせている。

「……あっ、あい……愛しているって……。そんな……。うぐっ……」
嗚咽にむせびながら、涙をこぼしている。
「―――はじめて言われたよ。生まれてはじめて、人から愛してるって言ってもらえた。しかもそれが、ドラコからなんて……。もう死んでもいいや。今ここで……」
「本当にお前は、大げさだな」
僕はやさしくハリーのひたいにキスをした。

ハリーは真っ赤になりながら、切羽詰まったように尋ねてくる。
「ずっと好きって、言い続けてもいい?」
「ああいいさ。お前の気の済むまで」
「時々、愛しているって言うのも、言っていい?」
「いいよ」
「うっとおしくない?」
「ああ、うっとおしくないさ。むしろ嬉しいよ」
その言葉にハリーは顔をくしゃくしゃにして、僕をギュッと抱きしめた。
「……ドラコ。ドラコ……」
小さな声で、ずっとささやき続ける。

僕を抱きしめるハリーの腕が気持ちよかった。
ハリーの熱い体温も、その汗も、においも、みんな好きだった。

「誰よりも君のことが好きで、愛しているんだ。ドラコ……」
「うん。分かっているから……」
「―――ドラコ……」
ハリーは本当に嬉しそうな顔をして、僕に笑いかけてくる。
「明日からはもう泣かないようにするから。男らしくするから、今だけは泣いてもいいかな?」
僕は相手の濡れたほほを撫でた。

「僕も泣きたいときは君の前で泣くから、そのときは、ちゃんと慰めてくれるかい?」
「もちろんさ、ドラコ。」
「本当の僕はひどく怖がりで、甘ったれなんだ」
「ものすごく嬉しいよ」
ハリーの顔がだらしないくらいに緩む。

僕はハリーの肩に顔を寄せた。
相手の肩口から見える景色が好きだった。

なんて世界は美しくキラキラと輝いて、そして幸せに見えるんだろう………


「ハリー………」
「なに?」
「―――いいや、何でもない」
またたまらず、「ハリー……、ハリー」と何度も呼ぶ。
相手は嬉しそうに、それに何度も答えた。
甘い顔をしているのはハリーなのか、自分なのか分からない。

「ずっといっしょにいよう」
「うん」
「ずっといっしょに眠りたい」
「ああ」
「ずっと抱きしめていたい」
「うん」
「ずっとキスしていたい」
「うん」
「ずっと愛しているから」
「ああ、僕もだ」

どちらか問うたのか、どちらが答えたのか、もうどうだっていい。
どっちが答えても、答えはいっしょだったからだ。

握り合った手と手。
僕たちは、そのお互いの手をずっと離さないことにした。

もうすぐ夏がくる。
幸せな思い出をいっぱいつくって、そして僕たちはいっしょに大人になろう―――


          ■END■
作品名:木漏れ日 作家名:sabure