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THE SPEAK OF MY HEARTS!

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すると、その視線の意味を理解したのか虎徹は苦笑しながら、そんな目するなよーとわらって、もう一度、なぁ、と声を上げた。
「こういうのも、わるくねーだろ?」
そういいながら、虎徹が見つめるのは橋の向こうのシュテルンビルトだ。
「なあ」
もう一度そう声を掛けられた時には、バーナビーはそうですね、と頷きながら虎徹と同じ様にその街を見つめた。
「そういえば、橋。なおったんですよ」
「あぁ、知ってる。つーか、あの橋なおらねーとこっちに来れないっつーの」
「そうでしたね、知ってたんですか?」
「どうだったかなぁ~」
「なんですか、それ」
かぶり、と手持ち無沙汰にひしゃげたハンバーガーにかぶりつく虎徹にくすっと、笑えば、虎徹はすっと目を細める。そして美味いよなぁと声を上げた。
「知ってたっていうよりさ、スゲーなって思ってるよ」
コーラの入った紙コップを掴み、ずずずと音を立てて啜る虎徹に、疑問の視線をバーナビーが送れば、虎徹は不思議そうな顔をした後にわかんね?と声を上げた。
「僕はジェイクみたいな能力持ったNEXTじゃありませんから、アナタの思ってる事なんて分かりませんよ」
そう言って、バーナビーがもう一度ハンバーガーにかぶり付くと、すげーよなぁ、と吐き出した後に、橋を指差した。
「この間、確かにあの橋は滅茶苦茶になってたのに、もう当たり前の様に人が行き来に使ってるってさぁ……本当、すげくね?」
子どもみたいな虎徹の発言に、バーナビーは、確かにそうですねと小さく頷くと、虎徹は更に言葉を続けた。
「人ってさ、ちっぽけってよく言うけどさ、こういうの見ると俺はすっげーって思っちゃう訳よ、あれだけの事に成ったのに、もう街は普段通りで、それをしたのはちっぽけって言ってる人達だ。」
「で、そんな人達を守るのが僕らヒーローの役目って言うんだから……ですか?」
キラキラとした目の虎徹の言葉を遮って、バーナビーは言うと、その声に虎徹は一瞬びっくりしたと言わんばかりに目を見開いた後に笑い声を上げた。
「そういう事だよ、バニーちゃん。分かってんじゃん。人々の生活を守るってさ、本当素敵じゃない?」
嬉しそうに笑う虎徹に、バーナビーははぁ、と息を吐き出した。
「何を今更」
その声に虎徹は、涙すら浮かべて笑い声をあげた。クールな顔したイケメンが、こんな風に人々の幸せを密かに願ってるなんて少し出来すぎてるじゃないか、と。
出会った頃のあのポイントばっかり求めてるだけのバーナビーではないんだな、なんて思うと腹の中になんだか笑い虫が入ってる様に笑いがこみ上げて、顔がにやけてしまう。
「……なんですか、気持ち悪い」
ニヤつく顔を片手で抑えてる虎徹にバーナビーはそんな風に呟いたが、その声すら、虎徹には照れ隠しみたいに聞こえてどうしようもない。
「バニーちゃん、本当に、さいっこう!」
笑いながら、虎徹は手元のコーラを掲げて乾杯のポーズで笑い声をあげると、バーナビーは呆れた顔でなにやってるんだか、と小さく声を上げた。
空が青くて高く、天気は快晴って言う名のそれだ。
「天気は良いし、ハンバーガーは美味いし。ついでにバニーちゃんは最高だし」
「ついで……って」
「まぁまぁ、言葉のあやってやつだよ」
「それだとしても、ついでってのは失礼ですよ、オジサン。そもそも今日ここに連れてきたのはアナタだと言うのに」
「あーあー悪かったって。お詫びにこれあげるから」
そう言いつつ、虎徹は食べかけのハンバーガーを差し出すと、バーナビーはため息を付いてから要りませんよ、食べかけなんてと声を吐き出すと、自分の手元のハンバーガーにもう一度かぶりついてから、虎徹をちらりと睨むと、空を見上げる。
「なーんだよ、美味いのに」
「それは十分理解しましたよ、それしか言えないんですか?」
「美味いもんは美味いんだもん」
「だもん、ってオジサンの癖に何ですかその言い方」
 はあ、とため息を付くバーナビーに、虎徹は唇を尖らせるとひゅうっと口笛を鳴らす。
「空も青いことだし、許してやってよバニーちゃん」
 そんな虎徹に、呆れた顔をした後にバーナビーは笑うと、はいはい、と声を上げたのだった。
     *
 有給休暇の終わりはあっという間だった。どこでどう場所を把握したのか(いや、簡単だ。PDAに決まってる)ベンチに座り佇む二人に、お隣空いてるかしらかしら?なんて声が上がり、振り向けばそれはアニエスで、虎徹はポカンと口を開けた。
「アニエスも休みなのか?」
「そんなわけ無いでしょ、アナタ達こそ二人そろって有給なんていいご身分ね、こっちは仕事途中」
そう言ったアニエスは視線を背後に向けて、指を指すのはヒーローTVの中継車だ。
「今朝急遽決まった事があったから、アナタ達を呼びに来たの。会社の方に連絡したら休みなんて言われて驚いたわよ」
「悪かったな、でもこっちもちゃんとPDAに連絡があったらきちんと向かう予定は立ててたんだぞ」
「その話はロイズ氏に聞いたわ、バーナビーの有給が溜まってるって言う話もね」
「だったら、そうカッカしなさんなよ、プロデューサー」
 言いながら、虎徹は氷しか入ってないけど、食うか?とコーラの入っていた紙コップをアニエスに差し出せば、食べないわよ、と呆れた声返り、それを横で見ていたバーナビーは大きく息を吐いた。
「なんでそれを女性に差し出しますか……アニエスさん、コーヒーで良いですか?」
「いいえ、お気遣い結構よ、バーナビー、それよりも時間が押してるの。バーナビーは市長の所で三時からの取材よ、もちろんヒーローTV独占取材」
「え?」
アニエスの言葉にバーナビーはぽろりと声を吐き出した。
「はぁ?ほんっとうに急遽過ぎるな、そろそろ二時で、三時からとか急遽にも程があるぞ、アニエス」
「それはこっちのセリフ。市民がここまで秘密裏にアレコレ進めていたのよ、市長とバーナビーの取材はそれの関連。こう急遽の取材なんて、正直こっちも驚いているんだから」
腕の時計を見ながらおいおい、と声を上げる虎徹に、ため息を漏らしたのはアニエスだ。その言葉にこればっかりは、しゃーないかぁ、と虎徹が声を上げると、バーナビーの方向に視線を向ければ、バーナビーは大丈夫ですと声を上げた。
「そーれだったら、俺はトレーニングセンターに行くかな」
と言うと隣のバーナビーにもう一度視線を移して声を上げた。
「しがないサラリーマンはつらいねぇ、バニーちゃん。貴重な有給半日で終わっちゃった」
 冗談めかして、そんな風に笑いつつ言う虎徹のその声にバーナビーも笑う。
「半日でも、有意義な使い方だと思いましたけどね」
 その声に、思わず虎徹は笑い声を上げる。それから、そっかっかと呟いてハンチングを目深に被りなおした。ベンチの上で足を子どもみたいにバタつかせて、もーなんなのーと虎徹は笑い声をあげている。その様子にはぁ、と大きくアニエスはため息を上げた。
「で、時間があまりないの分かってる?」
「あ、ごめんなさい」
「すみません、アニエスさん」
がばり、と起き上がる虎徹が素直に、バーナビーも同じく、あっ……と小さく声を上げて謝れば、アニエスはもう一度ため息を吐き出した後に乗って、と中継車を指した。
「お願いします」
作品名:THE SPEAK OF MY HEARTS! 作家名:いちき