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愛と友、その関係式 第23話第24話

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 渡りに舟とはまさにこのことである。
 美奈子は天童がいなくなった校門に、ぼぅっとして立ち続けていた。手には図書室から借りてきた沢山の本。ずしりと重いソレが、これからの美奈子の重ねるべき努力の多さを物語っている。
 はっきりいって、美奈子の学力では体育会系以外の進学は天地がまっさかさまになっても無理レベルである。それをこれからしようというのだ。これから控えている文化祭、クリスマス、正月、バレンタイン、素敵なイベントの数々をぼうに振って我武者羅に勉学へ勤しむ覚悟だ。
 そんな風に思っていたとき、ちょうど出会った天童が勉強をしていて、しかも中学時代は得意であったというではないか。あれほど自信満々なのだ。少なくとも美奈子よりは学力が上なのは間違いない。
 他校の教師に頼んだのは不躾だったかもしれないが、若王子も快諾してくれた。
 神様はいるのかもしれない。
 そんな風に、わりとロマンチックなことを美奈子は思った。
 ふと疑問に思ったのは、天童の過去だ。天童の言う通り、中学時代に彼が優等生だったとして――ああなったのはどうしてだろう?
「美奈子!」
 耳元で響いた怒声に、美奈子は考えを中断させられた。
 はっとしてみると、眼前には不機嫌そうに眉根に皺を寄せる鈴鹿がいた。
「和馬。……どうしたの?」
「どうしたの? じゃねぇぜ。何だよ、さっきの野郎は」
「天童くんのこと?」
 それと鈴鹿が怒る理由が繋がらない。
 美奈子が首を傾げると、ますます鈴鹿は顔を険しくした。
「ああ、そうだよ。姫条はどうしたんだよ。お前、留学したいって何処にだよ。留学したら離れ離れになるんだぜ? 姫条のこと大事にしてやれよ!」
 頭ごなしに鈴鹿は怒鳴った。
 鈴鹿は未だに姫条と美奈子が付き合っていると思っている。なら、この言葉は友人として正しい忠告なのかもしれない。
 頭では、そう理解できていた。だが、美奈子のなかにはふつふつと怒りに近い悲しみが湧きあがっていく。
 お門違いなショックだと解っていながら、鈴鹿に叫ばずにはいられなかった。
「そんなの和馬も同じじゃない! 留学したら紺野さんと離れ離れになるんだよ。それに……天童くんは私の友達よ。変な目で見ないで」
「――ッ」
 鈴鹿の顔が強張る。
 言ってはいけない言葉を言ってしまった。それも過去に似たような過ちを犯したにもかかわらず。
 ――やだ……私、最悪。
 美奈子は下唇を噛みしめた。
「ごめん。……帰る」
 美奈子は背中を向けると、足早にその場を去った。
 呼び止める声はない。
 美奈子はしばらく一心不乱に俯き歩いて、ふと巻かれたネジがきれたようにピタリと立ち止まった。後ろを振り返る。はばたき学園の校門はもう見えない。
「バカみたい……私」
 ふぅっと息を吐く。抱いた本の重みがただ痛かった。
 
25話へ続く