Distorted Love 7
―帝人Side―
空を見上げて臨也さんにフラれてからの一ヶ月間を思い出す。
色々なことがあったな………。
最初は心も身体もボロボロで、世界に僕だけ取り残されたような感覚だった。
……でも今は違う。静雄さんのおかげで逃げずに前を向いて歩ける。
……静雄さんとはあれから連絡を取ってないけど、やっぱり怒っているんだろうか…。
静雄さんがマグカップのことをどうでもいいと言ったのはわざとではないということは分かっている。分かっていたのに傷ついてしまう自分がいた………。だから最後まで想いを口にすることが出来なかったんだ。
そして僕は臨也さんとのことにけりをつけなければならない………。いつまでも思い出に甘えてちゃ駄目だ。
だけど、僕とあの人を繋ぐものは今や何もない。
それでも何かしなくちゃいけないという思いで町を歩いているけど、あれから池袋に来ていない人がいるわけないんだよな……。
「………てめぇ最近平和島静雄といる奴じゃねぇか。」
声に反応して前を見ると何人かの不良に囲まれていた。
そしてその集団のリーダーっぽい男が暴れる僕を無理矢理路地裏に連れ込む。
―――油断していた。確かに静雄さんと付き合ってからはこんな奴らに目をつけられることはあった。 だけど、今日みたいに一人でいるようなことはなかったから手が出されるようなことはなかった。
「平和島静雄はお前のこと気に入ってるみたいだし、俺らがお前を痛め付ければさすがにあいつも懲りるだろ。」
今じゃ本当にそうなのか分からない。僕がどうなっても静雄さんは気にも留めないかもしれない。
「……それって結局静雄さんに勝てないってことじゃないですか。それで僕が一人になった所を狙っていたのでしょう?」
「…………ってめぇ!!!!!!!!」
勢い良く男の鉄パイプが振り下ろされた。覚悟して目をつむると浮かんだ顔はやっぱり………………―――。
血が僕の顔につく……。そして鉄パイプの転がる音が不気味に響いた。
………血を流したのは僕ではない。男が鉄パイプを握っていた腕にナイフが突き刺さっていたのだ。
………どうしてこの人が此処に?僕はナイフの飛んできた方向を見る。
そこにはやはり今日僕が探していた人物の姿があった。
その人物は黒いコートを身に包み妖しいほど綺麗に笑っていた………。
「妖怪かまいたち参上。」
作品名:Distorted Love 7 作家名:ゴルベーザ