Distorted Love 7
「お…折原臨也!?池袋には最近来てないって………。」
不良の一人が震えた声で言葉を発する一方で、臨也さんは笑顔を崩さないままこちらへ歩み寄り、先程差したナイフを痛がっている男の腕からえぐり取るように抜いた。
「……………っ!!!!」
「……君達はさぁ、誰に手を出したのか分かってる?シズちゃんを懲らしめてくれるのはいいんだけど、この子はそのための道具なんかに使われていい人間じゃない。」
そう言った彼の笑顔の本質に気付いた不良達は、どんどん青ざめていく。
――目が笑っていないのだ。紅く鋭い瞳は不良達を射ぬいていた……。
「で、いつまで突っ立ってんの?目障りなんだけど。…あぁ……それとも殺されたいのかな。」
そう言って、血に濡れたナイフをぎらつかせると不良達は一目散に逃げて行った。
そして腕にケガを負った男も捨て台詞を吐き捨てる間もなく去った…。
喧騒が収まったところで僕は臨也さんに尋ねた。
「……どうして臨也さんが此処に…?」
「ん~…仕事がやっと片付いてね。何となく来てみたらこの様じゃないか。君はあんな不良達に啖呵切ってるし。すぐムキになる君は可愛いけど、少しは相手を選ばなきゃ駄目だよ。」
先程とは違う穏やかな顔で、へたりこんでいた僕に手を差し出す。僕はその手を取って、恐怖に震えた足を頑張って立たせる。
……しかし、何かおかしい。別れを告げられた時は僕と目も合わすこともしなかったのに、今臨也さんの目の中にはちゃんと僕がいる。
「シズちゃんは、君を守るとか言っときながら来てないんだねぇ。ほんと最低。」
「それは僕がっ………というか、やっぱり知ってましたか。」
「そりゃ、これでも情報屋だからね。それに…………。」
一瞬、ほんの一瞬彼は悲しげな顔をしたような気がした。
ただ、本当にそんな気がしただけだと思わせるように臨也さんは既に先程の表情に戻っていた。
そして、僕は意を決して本題を切り出した。
「臨也さん、僕はあなたに話さなきゃいけないことがあります。」
「……うん。とりあえず、こんな所じゃ、あれだからお茶しながらでいいかな?」
僕は頷いて彼の後ろを着いて歩いた。
一ヶ月前まで追いかけていた彼とお互い笑顔で別れられるように。
作品名:Distorted Love 7 作家名:ゴルベーザ