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【腐向け】西ロマSS・5本セット【にょたりあ】

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愛のキューピッド


「……なんやの、ロマ。その格好は」
「え? 変?」
 久しぶりに会いに来た玄関先で、会って早々スペインが眉間に皺を寄せた。
 張り切って服を選んだ筈だが、何かおかしかっただろうか。体を捻りながらあちこちを確認する。裾は出ていない、ほつれもない。じゃあ足元だろうかと下を向くと、スペインが慌てて声を荒げた。
「あかん! そんな露出度の高い格好したらあかんで!!」
「へ?」
 肩をつかまれ、強制的に背筋を正される。ポカンとしつつスペインの話を考えると、胸元が開いている上着と膝上ミニスカートがお気に召さなかったらしい。せっかく悩んで選んで来たのにとがっくりしつつ、スペインの頬がうっすら染まっていることに少しだけ気分を良くした。
(これは、意識されているのかも)
 親子のように暮らしていた過去が二人にはあり、今でもスペインは父親のように口うるさい時がある。新しい関係を作りたい、出来れば恋人になりたいと考えている自分の気持ちには気付かず、元親分様の鈍感は絶好調でフラグを折り続けていた。それを考えれば、今回の話も「だらしない格好をするな」程度なのかもしれない。
 ……あまり期待しないでおこう。スペインの鈍感に慣れた自分に苦笑していると、スペインが急に腕を掴んでひっぱった。
「着替え貸したるから、はよう着替え!」
「はぁ!?」
 腕を引っ張られたままスペインの部屋へ連れて行かれる。ぽいっと放り込まれると、クローゼットから取り出した服を渡された。
「ちょっと、スペイン!!」
「着替えるまで、ご飯はお預けやで」
 お預けって、やっぱり子ども扱いなのか。文句は山ほどあったが、目の前で部屋の扉が大きな音をたてて閉められた。その音に首を竦め、手渡された服に目を落とす。シンプルなトレーナーと、ジーンズ。どちらも見覚えのあるもので、確かにスペインの服だった。
(着替えるって……、これに? スペインが着た物を、私が?)
 瞬間、顔に血が昇る。
 フラグを折るのか立てるのか、はっきりしろと言いたい。凄く言いたい。
「ああ、もうっ!!」
 意識しているのは自分だけなのだと、思い知らされる。怒りのまま服をベッドに投げつけ、肩で息をした。ずっとずっと好きだった。ちょっとした事で一喜一憂して、今日だってスペインに可愛いと思われたくて服を選んだのに。
 投げつけた服に飛び込むように、一緒にベッドに沈む。家を出たときのやる気が嘘のようだ。ベッドから微かに香るスペインの匂いに泣きたくなりながら、ロマーナは大きく溜息をついた。
(……もう、今日はいいや)
 またいつも通りの、表面上だけの親子の時間を過ごせばいい。投げやりな気持ちで体を起こし、上着のボタンに手を伸ばした。

「おーい、スペイン」
「あれ? フランスやん」
 ロマーナを部屋に押し込め戻ると、そこには椅子でくつろぐフランスが居た。テーブルの上に置いてあるのは、前に頼んだワイン。それに礼を言い、お茶の準備をしながらロマーナの着替えを待つ。
「……なんだかなぁ。可愛い子が素敵な格好してるのに、何が駄目なのさ」
 先程の会話を話すと、フランスが首を振って肩をすくめた。
「あかん! かわええロマが、もし変な男に捕まったりしたら……!」
「そんなんじゃ、彼氏も出来ないだろうな」
「……彼氏なんてまだ早いわ」
 可愛い俺のロマーナは、しっかりしてるように見えてけっこう抜けている。変な男に騙されるかもしれないのに、あんな格好していたら危ないに決まっているじゃないか。確かに大きい胸が強調された服は可愛かったけれどもと主張すれば、フランスに呆れられた。
「いやいや、ロマーナだってもう年頃って年齢じゃないって。平和な時代だし、結婚だって考えられるだろ?」
「まあ、いい男がおったらな……」
 娘を嫁に出す父親の心境なら、ロマーナを預かった時から感じていた。いつかこの子が恋人を連れてくるのかと考えてしまい、ついつい悪い虫がつかないように箱入りで育ててしまっても仕方ないだろう。
 そのせいもあってか、ロマーナは変にシャイで奥手な所がある。そこも可愛いんやけどと頬を緩ませると、目の前のフランスが髪を掻きあげて決め顔を見せた。
「ああ、俺とか?」