【腐向け】西ロマSS・5本セット【にょたりあ】
「しばくで」
それだけはあり得ない。睨みながら、きっちりお断りする。確かにフランスはいい友人だが、恋人にはするべき相手ではないと、彼の交際関係を思い出す。愛されたがりで寂しがり屋なロマーナには、海より広い愛のフランスは合わないだろう。
「ちょっと、顔怖いんですけど! じゃあ……アメリカ?」
「あんなガキにロマを任せられわけないやろ、却下や」
ちょっと勢いがあるだけの我侭小僧に、そんな甲斐性があるとは思えない。
素直じゃないロマーナを気遣えるのか心配だ。あの子の言葉の裏が読めるとは、到底思えなかった。
「じゃあ日本?」
「確かに日本はええ奴やけど、押しが弱そうやから駄目」
ヴェネチアーノが仲良くしている日本は、穏やかで芯のある男だ。年齢も遥かに上で、空気を読む事を得意としている。彼なら確かに包み込んでくれるだろう。
だが、ロマーナは強引に誘わないと素直に胸の内を言えない時がある。空気を読むがゆえに、強引に出来ない日本には辛い相手だろう。
「じゃあドイツか?」
「……ロマが嫌がるやろ」
ロマーナのドイツ嫌いは今もあり、筋肉が怖いとかムキムキは嫌だとか言って、こちらに泣きついてくる。よく助けを求められるので、あの二人がくっつく事は無いだろう。
「イタリアは喜びそうだけどなぁ。結構いいんじゃないか?」
「いやいや、あかんわ」
ドイツは実直でいい男だが、Sだとヴェネチアーノが言っていた。ムッツリだとも。そんな男と結婚したら、俺のロマーナがとんでもない事をされそうで安心出来ない。そんな羨ましいこと、絶対許せない。
「お前、誰ならいいんだよ! お父さんもいい加減にしろって。子離れしなさーい」
あれもこれも駄目と言うスペインに、フランスが怒る。子離れ出来ていないのは理解しており、胸に刺さる言葉だ。ロマーナにも時々「お父さんか」と突っ込まれている。
もうあの子は独立している大人なのだから、彼氏の一人や二人出来てもおかしくないだろう。ロマーナが彼氏を自分に紹介する状況を想像し、しょんぼりと肩を落とすスペインにフランスが溜息をついた。
「そんなにロマーナの扱いが難しいなら、お前が嫁に貰うしかないじゃないか」
「……!!」
体が電撃を受けたように揺れる。
フランスの言葉を頭の中で反芻し、その発想は無かったと深く関心した。
「え? 何その顔」
「その手があったわ……。ロマーナあああああああ!!」
誰にも任せられないなら、自分で面倒見ればいい。可愛いロマーナが彼氏をつれて来る事もなくなるし、ずっと二人で居られる。それはとても素晴らしいことだ。ならば今すぐ求婚しようと、顔を引きつらせるフランス置いて自室に飛び込む。
「え、ちょ! スペイン!? まだ着替えてる途ちゅ」
「ロマーナ、結婚しよ!」
「はぁ!?」
ノックを忘れて開けた先には、まだ着替え中のロマーナが居た。慌てる彼女の手を取り、勢いのままにプロポーズをする。真っ赤な顔した少女の返事は、いつもの頭突き。
「着替え中って言ってるでしょ! でてけー!!」
「おーい、お兄さん忘れないでよ……」
遠くから大声での口論が聞こえてくる。痴話喧嘩に巻き込まれたら面倒と今日は諦め、フランスはそっとスペインの家を後にした。
作品名:【腐向け】西ロマSS・5本セット【にょたりあ】 作家名:あやもり